数日で何度となく訪れた場所。
相変わらず、柔らかな木漏れ日と吹きぬける風が心地良い、静かな場所に
俺たちは居た。
「……僕が見つけた時、すでに命数は尽きようとしていたんだよ」
木の根元、土が盛り上がっただけのひっそりとした墓に、ルックは数本の花を手向けながら呟いた。
「癒しの魔法で暫くは元気だったけれど、…それも限界がある。ここに辿り付くまでに衰弱しきった身体は、完全に癒すことは出来なかった」
静かに淡々と話す様子を、口を挟む事無く耳を傾ける。
あの日、ルックの告白を聞いた日から、俺たちは表面上は変わっていなかった。
特に共に行動をするわけでもない。会話の内容も、対した変わりはない。
他の奴らと同じ。すれ違っても、挨拶程度で。
ただ…少しだけ違いがあるとすれば。
こんな風に自然に…本当に自然に。
足が向く場所が、時期が…重なると言うこと。
今日、ここで会う約束なんてしていたわけじゃなかったけれど。
それでも、俺たちは此処に居て、数日前の記憶に残る話をしていた。
「母猫とはぐれでもしたんだろうね。もしかしたら隣町から来たのかもしれない」
「……長い旅を、したのかも知れないな」
常よりも饒舌なルックに、相槌を打つ。
そうだね…と、ルックは立ち上がって空を仰いだ。
風に揺れる樹木に、太陽の光がちらちらと揺れて、ルックに降り注ぐ。
眩しそうに手をかざす様子を、同じように瞳を細めて眺めた。
「きっと、最後は…苦しまなかったさ」
「さぁ……どうだろうね」
俺と同じ事を考えているだろうに、簡単には肯定しない。
そんな…心のうちが、わかるようになったのも、違いと言えるだろうか。
今まで見ていなかった面を、見れるようになったからだろう。
ルックはきっと、何も変わってはいない。
ずっと同じ表情を俺に向けていたんだと思う。
それに気付ける事で…表面上は変わらない俺たちは、いや…俺は
大きく心の変化を感じていた。
「そろそろ、行くか」
1歩踏み出して、ルックの頭をくしゃり…と、撫でる。
そんな俺の仕草に、睨みつけるような視線が返って来るのも、今は予想ができた。
反しない反応にくす…と笑って、歩いていく。
行く先は言葉にして居ないけど、向かう方向は同じだろう。
少し後にある気配を感じながら、樹木を抜けた先の鮮やかな青空を仰いだ。
鮮明な青が眩しくて再び、目を細める。
俺は…先に歩いていけるだろう。
何処へ辿り着くかはまだ、わからないけれど。
その先に、この少年が
居たら良いな、と……
そう、思っていた。
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