→→→  ふぁいっ! ←←←

「おい、てめぇ…今、俺の足蹴りやがっただろ」
「……あ?」

始まりはいつも雨
…ではなく、そんな言葉からだった。

「言いがかりつけないでくれよなー…ちょっと掠めただけじゃん?」
言われた方の男はその絡んできた男に飄々と返事を返す。
赤い髪のちょっと見たところやんきー…失礼。少々、強面で腕の立ちそうな男に対して良い度胸である。
その…青年と少年の中間くらいの若い男はひょい…と肩を竦め
「ったく困ったもんだよな〜酔っ払いは」
と言い残しさっさと奥へ行こうとした。
そのまま行かれちゃ話にならないので引き止めてくれな――…
「待ちな、確かに飲んじゃぁいるが酔っちゃいねぇ。てめぇの非礼を詫びるのは当然じゃねぇのか?」
…と、言うまでもなく、赤毛の男は立ち上がり、自分より一回り小さい青年の肩を掴んだ。
そこまでされても、その青年は怯えるどころか見上げ、不適に笑ってさえ見せる。
「酔っ払いは自分で酔ってるなんて言わないもんだよ〜?」
「うだうだ屁理屈言ってねぇで一回頭下げれば片は付くんだ。イイ子になりな、ぼーや」
「…聞き捨てならない事を言うねー…誰がぼーやだって?」
上から見下ろし、子馬鹿にした言いように流石に剣呑な色を滲ませた。

ぴし、と二人の間に走る緊迫感。酒場でたむろっていた周りの野次馬は興味心身で二人を見守る。
当然止めるものなんざいやしない。こうしたアクシデントは酒のつまみだ。

「……ガキはガキだろ?とっととおうちに帰ってママに泣き付いてきな」
「少し足が当たったくらいで目くじら立てるような狭量な大人よりゃマシなんじゃね?」
「…………いい度胸だ」
「それって褒め言葉?」

二人の間にバチバチと火花が飛び散る。
アチチチチ…あ、燃えやすいものは近づけないで下さいね。観衆の皆様。

「ちょっとアンタ達……」
エスカレートしそうな二人の勢いに見かねて酒場の女主人が駆け寄る。

「近頃のガキはほんと、躾がなっちゃいねぇな…直々に俺が教えてやろうか?」
「……勘弁してよ、アンタみたいになったら女の子みぃ〜んな取り逃がしちゃうじゃん?」

「落ち着きなって、二人とも…」

「ガキガキって言うけどさーアンタの方がよっぽど大人気ないじゃん?つまんない男だよねー」
「……どうやら身体で覚えたいらしいな?てめぇ……」

ゴゴゴゴゴゴ…ォォォ!!!と炎が吹き上がる(比喩表現)
ついに赤毛の男が青年の胸倉を掴んだ…!!さぁさぁ!!ゴングは鳴るのか!?

「……………………」

どがごん+どがごん

「〜〜〜〜〜!?!?!!!」×2

のぉーーー!!とでも叫びたかったであろうが声も出ないらしい。頭抱えてぢたぢたのた打つ二人。
女将からのきっついテフロン加工フライパン攻撃に男達はあえなく沈んだ……

You Win!!!

……じゃなく。

「店ん中で騒がないどくれ、どうしてもやりたいなら外につまみ出すよ?」
でろでろと背後に暗い影をまとわりつかせ(漫画で言うと蚊取り線香の変形版を背負っているような…少し違うか。)女将が睨みを利かせる。

「……わりぃ…ちょっと、大人げなかったな」
「駄目だよ〜お姐さん、怒ってちゃ男が逃げちゃうぜ?」

ばこ。反省の色の無い方にもう一発。

「……ごめんなさい」

情けない男達である。


「ぼーや、あんたイケる口かい?」
涙目でそれでも睨み合っている男どもに溜息をついて女将は若い方に聞いた。
「まぁ…それなりに慣らしてあるけど?」
こちら、ぼーやと言われた事に対しては何も返さず、素直に返事をする。どうやら、女性となると話は別になるらしい。

「ここは1つ穏便に、飲み比べでもしたらどうだい?」
返事を聞き双方の肩をぽん、と叩く。すると不満そうな声が上がる。
「おいおい、待ってくれよ、俺ぁさっきまでにボトル開けてんだぜ?」
「ハンデくらいつけておやりよ、ぼーや相手にまともにやる気かい?アンタの名が泣くよ?」
「……まぁ、これっくらい別に全然平気だけどよ」
女将は赤毛の男とは親しいのか扱い方を心得ているようだ。簡単に口車に乗せられて踏ん反りかえっている。
「どうだい?アンタに悪い条件じゃないと思うけど?」
「俺は良いぜ?貰えるハンデは貰っとくし、それで勝てるんならね〜♪」
「……は、これくらいで俺に勝てるとでも思ってんのか?」
「さっき弱音吐いたのは誰かなー…」
「誰が弱音なんて吐い……」
再び声を荒げようとしたところで女将のフライパンが目に入り慌てて飲み込む。

「それでいいね二人とも」
「……はい」×2

それから数時間。

「…そろそろ辛いんじゃねぇのか?」
「まーだまだ、アンタこそ苦しそーじゃん?」
「誰が…っ」

 (長いので略)

「いい加減に、観念…したらどうだ」
「……べっつに?…全然、へーきだけど?」
「の、わりには目が据わってるぜ?」

 (またまた略)

「……ま、まだ…いける…」
「無理……すんなよ…ふらふら…じゃん?」

 
 (再び略……お?)
 
ぱた

机に突っ伏したのは、ほぼ同時の事だった。

「なかなか根性あるじゃねぇか…」
「アンタこそ、やるねー…俺、結構…自信あったのにさ」
「は、言いやがるぜ…気に入った、お前、名は?」
「シーナ。人に聞く時は先に名乗るもんだぜ?」
「ははは、違いねぇ…俺はシードだ、覚えておけ」

何だかひと昔前のなんとかドラマを見ているかのように男たち二人はどちらともなく笑いあう。
あ、向こうの方に夕日が見える。ちょっとちょっと、今は夜だよ、間違えてるって大道具さん。


さて、ここで問題。
一番、得したのは誰だ?


「…ふふふ、あいつら気前良く払ってったねぇ…若い方は心配だったけど、どっかのぼんぼんかね?ありゃ…とにかく、思わぬ稼ぎだったねぇ……」

 (間)

ファイナルアンサー?

 (間)

………………!!!!(←なんか言ってる)

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