「・・・・・・おい、何してるんだ?」
「この状況でわからないなら相当マヌケだね」
淡々と言うその声に青年・・・フリックは盛大な溜息をついた。
(何で朝っぱらからこんなに疲れなきゃ行けないんだ・・・)
自分にまたがり、何やらごそごそしている小柄な少年をみて顔が引きつる。
何か気配がするなあ・・・と思ってみれば・・・いや、そこまで起きない俺も俺だが・・・
(本当にこいつはこっちの都合なんてお構いなしなんだからなあ・・・)
「・・・おい、今日は早くから会議があるから・・・冗談もそれくらいにしてくれ」
息を吐き出しながらぼそぼそと言う。
別に退けようとすれば出来るが・・・無理に押しのけて機嫌を損ねられるのは得策じゃない。
(力だけなら当然勝てるけどな・・・・)
フリックは少年の希有な魔力の事を思い浮かべ、さらに今までそれで散々された行為を思い出し、げんなりした。
「僕は出ないから関係ないよ」
確かこの少年も出席しなければいけないはずだ。悪びれもせずサボり宣言をする所がらしいといえばらしいが・・・
「俺は多いに関係あるんだ・・・遅刻でもしたらシュウに何言われるか・・・・」
反論も出来ない嫌味を、ネチネチと言われるに違いない。いつもより2割り増しの仕事と共に。
「だいたい、お前こーゆう事そんなに好きじゃなかっただろ?」
「・・・・さあね」
(こいつ・・・ワザとだな)
会議がある事を知っていてこういう行動に出ているのだ。つまり、ただの嫌がらせ。
「・・・・っと、待て待て・・・っ」
あまりにも彼らしい結論に軽い目眩を起こしていると、いつの間にやら手が下肢の方へと伸ばされていた。
慌てて肩を押さえて止めようとする。
「何で?」
「何でって・・・冗談にならなくな・・・・・」
布越しにそっと触れられて息を飲む。それだけで我を忘れるほど初でもないが・・・生理現象は起こるもので・・・
「僕は冗談はキライなんだ」
「やめろって・・・・本・・・当に・・・・」
少しずつ息が上がる。押さえようとするほど、感覚は内に溜まっていく。
わかってはいるが、素直に外に出せるほど達観もしていなく
(突き飛ばしたら怒るだろうなぁ・・・)
この後に及んでどうやったら穏便に止めさせられるか考えはするものの、相手が悪すぎだ・・・思い付かん
「・・・・・・どっちにしろ、行けないよ会議には・・・・」
意味ありげに小さく笑う彼を見て首をかしげる。
「何を言ってるんだ・・・?」
「アンタ・・・昨夜ワインを飲んだよね・・・?」
寝る前に、確かに飲んだが・・・何で知ってるんだ?
怪訝そうに少年を見詰めると口元だけに笑みを浮かべた。
「飲んでて・・・気づかなかったの?」
遠まわしに言う彼に・・・不穏な空気を感じ取る。
まさか・・・まさか・・・・・・
ほんの少しの可能性を思い付く、だが・・・いや、こいつならやるかも知れない。
しかし、自分の身体に顕著な変化があるわけじゃないし・・・
「・・・時間を合わせて調合したからさ・・・そろそろ、かな?」
心の中を見透かしたかのように、疑いに答える言葉が紡がれる。
「お前・・・まさか・・・っ」
「ねぇ・・・熱くなって来たんじゃない?」
耳元で囁かれた瞬間、心臓が跳ね上がる音を聞いた気がした。
「ほら、もう行けないでしょ・・・?」
くすくす笑う声が遠く聞こえる。
諦めるしかないか・・・
まだ、ほんの少しだけ残っている理性で、欠席の言い訳をどうしようか考え出した・・・・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「アンタって本当に単純だよね」
「・・・・・・何が言いたい」
「暗示とか、催眠術・・・一発でかかるんじゃない?」
「だから・・・何を・・・・・・」
「僕は何か入れたなんて一言も言ってないけど」
「・・・・・・・・・・っっ・・・・・・お前・・・・・・・っ!!!!・・・いっ・・・たた・・・・・」
「無理しない方がいいんじゃない?年なんだからさ」
「〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「まあ、今日は一日寝てたら?」
〜〜 Fin 〜〜