はたから見ると仲の良い兄弟に見えるかも知れない。
俺はルックに手を引かれ歩いている情景を、外から見た図で想像してげんなりする。
しかし手を離す気もらしく(何度か言ったが聞き入れられなかった)とてとて着いていくしかなかった。
あの数分後、ルックは言葉の通り小さな男の子用の服を持って来た。
何処から持ってきたのかは恐ろしくて聞けなかったが、言われるままにそれを身に付ける。
用意を済ませた俺を連れ出そうとするルックに最初は抵抗をしたが……
「そのまま閉じ篭ってても解決しないと思うけど?」
……と、言われて渋々部屋から出る事にしたのだった。
「なぁ…何かあてがあるのか?」
城の廊下をずんずんと歩く(歩幅は合わせてくれているようであったが)ルックに声変わり前の高い声で問い掛ける。
声が口調に合っていないのは自分でもわかり、どうしようもなく情けない気分になる。
「さぁ…どうだろうね」
答えとも言えない曖昧な返答をしてついでに降りる小さな笑い。
揺ぎ無い足取りで進む彼に少しの期待を込めて言ったのだが…するだけ無駄だったようだ。
ただ歩いてるだけでも解決しないんじゃないか…
心中で毒づいた。こんな風に人目に晒して誰かに気づかれでもしたら――
俺は、そわそわと落ち着かない様子で辺りを見回す。
今の所すれ違う人々には気づかれていないようで、ほ…と安心する。
時々奇異の目で見られる事にどきっとしたが、どうやらそれは、ルックが子供と同伴している事に対しての驚きのようだった。
確かに似合わないよな……
ルックを良く知るものほど、この光景はおかしなものに見えただろう。
良いお兄さんのように見えないでも無い、背中を見て小さく笑う。
……と、前方から来る人物にその笑顔が凍りついた。
「よぉ!…珍しい光景だなぁ?」
声をかけられて足が止まる。
俺はついその人物から身を隠すようにルックの後ろに逃げ込んだ。
それはまるで、恥ずかしがりやな子が驚いて隠れるような感じである。
俺のその行動を見てそいつは、はっはっはと愉快そうに笑うと
「随分な人見知りだな、お前の子供か?」
とふざけた冗談を言った。案の定、ルックは目を細めて睨み上げる。
「笑えないね、ビクトール」
平静に返事するルックにビクトールは笑って真面目に返すなよ、とルックの肩を叩いた。
最悪だ……
俺は会いたくもない人物にばったり出くわしてしまう自分の不幸を呪った。
最も避けるべきは他に居たが、ビクトールにもこの姿を見られたくはなかった。
このまま隠れてやり過ごせないかな…
俺はルックの腕に顔を埋めて何とか誤魔化そうとしていた。
その身体が急に浮遊感を感じ……
「ほら、ご挨拶くらいしなよ」
ルックに抱き上げられ、ビクトールの眼前に晒された。
――っの、野郎……っ!!
俺の意図などわかってるくせにそういう意地悪をする少年に腹が沸き立つ。
言葉無く呆然としている様にビクトールは苦笑して
「おいおい、そんな緊張してんなよ。別に取って食ったり……?」
怪訝そうにまじまじと覗き込んできた。冷や汗がだらだらと流れる。
俺は合わせられる視線に石になったかのように動けなくなった。
「ルック、もう1つ笑えない冗談言っていーか?」
「……聞くだけは聞いてあげようか」
「コイツは――」
ビクトールは俺の鼻先に指を突きつけて言った。
「お前とフリックの子供か?」
「〜〜〜んなワケあるか!!この馬鹿熊!!」
……つい、いつもの調子で叫んでしまった。
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