「よくよく、変な現象に巻き込まれるよなぁ…お前」
当然の如くすっかりばれてしまい、ビクトールは俺の顔をにやにやしながら眺めていた。
やっぱり面白そうにしている奴に俺はつくづく自分の人間関係を呪う。
真剣に受け止める奴は居ないのか……っ!!
こっそり拳を握っても気づいてくれるわけでもなく。
「でもちょうど良かったかな」
心で涙しているとルックがぽつりと呟いた。
「探してたんだよ、アンタを」
「俺を?」
ビクトールは、ほえ…?と間抜けな声を上げてルックを見る。俺も同じような顔で視線を移した。
重くないのか…そのまま抱き上げられていて、その端整な顔は間近にある。
いつもとは違う位置関係に、変な感じがした。何故か気恥ずかしいような……
「コレ、昨日の夜の事覚えて無いって言うんだよね」
ルックは両手が塞がっている為、顎でしゃくって俺を指した。
……コレ呼ばわりされた事は取りあえず置いておいて……
そう、俺の記憶は昨夜酒場に入って暫く後から消えているのである。
原因追求の為に昨日の行動を話していたのだが…
そこまで飲んだ覚えも無いのに、どうしてもその辺りの事が思い出せなかった。
「はは…ぁ、俺と飲んでたんじゃないかって思ったのか?」
「そう」
ビクトールは察して先回りをする。素っ気なく返事するルックに
「悪ぃが、昨夜は一緒じゃねぇよ。ちょいと野暮用で外に出てたんでな」
申し訳なさそうな顔でがりがり頭を掻く。
「酒場に居たって事まで覚えてるなら、酒場に行っちゃぁどうだ?」
ビクトールが最もな事を言ったのでそれもそうだ…と、俺は思った。
「向かってた所だよ」
答えるルックにあれ……?と首を傾げる。
それにしては遠回りだったような……そもそも転移魔法使えば一瞬だっただろうに
俺はそれをしなかった理由を思いついたが、疲れるだけだったのであえて無視を決め込んだ。
ワザと人目に晒してたなんて知らない知らない……
俺はぶんぶんと被りを振って思いを打ち消す。どうせ抗議したって……
と、ふとルックと視線があう。
にやり、と笑う様は俺の思いなんて見透かしてるよ…と言いたげで。
あとで覚えておけよ……
元に戻った後にはしかるべき仕返しをしてやろうと俺は固く胸に誓った。
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