姫初め

部屋に入った途端、違和感に気付く。
しぃ…ん、とした部屋に僅かな気配。
良く知るその間隔に、フリックは警戒もせずに微笑んだ。
「来てたのか…」
ばさばさ、と装備を外してベッドに放り投げ窓際に佇むルックに視線を送った。
「悪い?」
振り向きもせず、素っ気無く一言で変える返事。
相変わらずな事だな…と、微苦笑して窓に近い側のベッドに回りこみ、座る。
「悪かったら、気付いた時点で追い出してるさ、珍しいな…部屋で待ってるなんてどうかしたか?」
俺はようやく振り向いて自分を見る彼の顔を見上げる。
今日は月も出ていない。窓からの光もない部屋では表情すらもわからない。
さすがに暗いと思い、ベッドサイドにおいてあるランプを手探りで探す。
慣れてる自分の部屋であればこそ何も見えなくても不自由は無いが、ルックには必要だろう。
そう思って、伸ばした手がいつの間にか近づいていたルックによって遮られた。
「…?ルック??」
「…もうすぐ…年の変わる時間だね」
怪訝気な自分の声には答えずに、唐突にそう切り出す。
あぁ…、と一つ相槌を打って
「そうか、そういやそんな区切り、あったっけな」
今、思い出した、という風繋げる。
「俺の村ではあまり、取り立てられるわけじゃないから忘れてたよ」
今だ握られている手の冷たさを気にしつつも、見上げ言葉を続けた。
何時から此処に居たのだろう。暖房器具もないようなこの部屋で、ずっと待って居たのだろうか。
ルックは普段から軽装だから…
風邪でも引いたらどうするんだ…と、思いながら無意識に手の握りを固くする。
自分の体温を伝えるかのように。
「僕も知らなかったけど、…ある人に教えてもらってね…」
もう一方の手でさすってやろうか、とまで考え出した時、声がそれを留める。
「教えてって、変わった次の日に祝う…って事をか?」
「あぁ、祝ったりもするの?年の区切り毎に?何でそんな事するのさ」
「そりゃ、次の年の繁栄とか…えぇと、無事を願って…とかじゃないのか?俺もあんまり知らないんだが…って、じゃあ何を教えて貰ったんだ」
「そのうち…わかるよ」
暗闇でもわかる、笑う気配。普段から良く見る口元に浮かぶ微笑は想像するに難しくない。
そのまま暫く、言葉が途切れて…ふいに、ルックが自分の身体を預けてきた。
膝を跨ぐようにして、俺の首に腕を巻きつける。
衣服越しに伝わるひんやりとした感触。唐突な行動だったが、それよりも先に暖めてやりたいという衝動で、ぎゅ…と抱き締め返した。

時計の針の動く音が静まり返った空気の中で響いている。

カチ、カチ、カチ、カチ……

規則正しい音に、カチ…、と秒針とは違う重みのある音が重なった。それを聞いた時ルックは閉じていた瞳を開いた。
「変わった…」
俺の部屋にある時計には時間を知らせるような機能は無い。
それなのにまるで計ったようにルックがそう言ったから、驚いて目線でサイドテーブルの時盤を見ると、確かにその針は長針と短針が天を指してぴったりと重なり合っていた。
俺が時計に気を取られて眺めていると、急にその視線が揺らいだ。
あ?…と思ってるうちに、身体がベッドへと沈み込んでいた。
「年が明けて、初めにね…」
囁きながら言う言葉を、聞き取り難かったが俺は懸命に拾っていた。
何故か抗議する気も、抵抗する気も起きなかった。突然の行為の始まりに驚いてはいたけれど。
「……初めに…、なんだ…?」
頭を胸にすり寄せて、息を吹きかけられる。服をはだけ、息のかかるぞくりとした感触に自然に擦れてしまう声を抑えながら、続きを促した。
「一番初めに行為、する…事を、姫初め…って、言うんだってさ…」
くすくす…と、笑いを含ませながら言う言葉は、馴染みは薄かったけれど何処かで聞いた事があった。
ぼう…と、しだす思考回路を大きく息をついて元に戻そうとする。
「……っは……、そ…んなの…誰に聞いてきたんだ……」
ちゅ…と、突起を吸われてびくり、と身体が跳ねる。素直な反応を楽しんでいるのか…舌で舐って、甘く噛んで…吸って…と、執拗にそこを愛撫された。
「誰でも、良いでしょ…?」
唇をようやく外して、ペロ…と仕上げにそこを舐めると、充血し鮮やかに赤く色づいていた。
「ふふ…どうして、そんなに大人しくしてるの…?」
感じるままに愛撫を受けている俺に、含み笑いで聞いてくる。
自分でも疑問なのに答えられるか…と、答えようとしても。
矢継ぎ早に触れられる手に、言わせても貰えない。
「……ぁ、…く…ぅ……知……、か、そん…な……、っく」
意味の不明な喘ぎ混じりの声しか出て来ない様子に、また小さく笑いが聞こえた。
「良いけどね…面倒がないから、さ……」
「あっ……あぁ…!、…ふ…」
後ろの入口に入る指の感触に首が仰け反る。楽しげに言うルックの言葉もあまり耳には入らない。言葉を話す度に伝わる、指からの僅かな振動さえも刺激になってしまう。

内部の解れと共に指が増え、掻き回される。
元来、湿るはずのないそこから、ぐちゅぐちゅ…と液音が漏れるのは……
「凄いね…前、触ってないのに…さ」
耳元で囁くルックが、その様子を伝えてきた。俺は自分の状態に羞恥に赤く染まる。
前への愛撫が何もされていないと言うのに。

俺の中心は熱く滾り、下折立っていて…先からはどくどくと先走りが流れていた。
液が伝わり落ちる流れさえも快感に変わる。指との結合部に止めどなく流れ、挿入を楽にしてくれていた。
ぐりゅ…と、指を曲げる。刺激のポイントをまともに擦られて痺れるような感覚が突き抜けた。
「……っあっ!!……ぅ…、ん…っ」
声を大きく上げて、身体を痙攣させる。ルックの指先の動きで翻弄される。
達してしまいそうになると、快感のツボを微妙にずらされイかせて貰えない。
そんな事を繰り返されて、際限まで身体を高められる。
「そうだ…お祝いするんだっけ……?」
好きに弄っていた指を急に静止させて、きょろきょろ…部屋を見回した。
「……あ、…ぅ…、ル…ック……」
波が止まり非難するような声がつい、上がってしまった。
擦れる抗議に、喉で笑いながら絡みつく内部から指を引き抜いた。
途端、上がる…引きつった声。それを聞きながら、ルックは身体を離してベッドを降りてしまった。
「………ん…、く…」
何処へ行くのか…気配は遠ざかっていく。その背を見る事も出来ず、身体の奥から湧き上がる疼きを懸命に押さえようとシーツを握り締めた。
だが、放り出された身体は早々治まるはずもない。
はしたなくも、止められず足を擦り合わせてしまう。
自分の手が伸びそうになる衝動に必死で耐えて、早く…、口を開こうとして気配が戻ってきた。
「……良く、我慢できたね…」
ベッドに再び戻り、にっこりと微笑んで頭を撫でる。
その仕草にむっとして抗議しようにも、口を開けると出てくるのは擦れた吐息ばかり。
「これをね、取って来たの…お祝いだもんね?」
そう言ってぼんやりとした視界に見せたのは、かなり度数の高い酒瓶だった。
ルックはそれを片手に持ちながら、器用にも行為を再開する。
「……っ、…ふ、あ……なんだ…よ、飲むんじゃ…ないの、かよ…?」
「飲むよ?…とても美味しい飲み方…教えてアゲル…」
くす…鼻にかけた笑いが聞こえた直後、足を大きく開脚されて、指よりも数倍太いモノが中に入ってきた。
「あ!!……あ――……っ……う……」
思わず強ばる身体に、中の締め付けもキツくなりルックは眉間に皺を寄せ、数度軽く揺さぶる。
ず…ず……と、揺れるたびに中へ中へと侵入して行く。
全て納まった後、ルックは酒瓶の封を開けた。
「………、こうやって…飲むん…だよ」
荒げた息を交えてそう言うと、酒瓶の口を結合部に向けて傾ける。
「……ひ…っ、あ……っ」
細く流される冷たい液体に、びく…と身体が竦む。
丁度そこへ流れるように細くチロチロと液体を流し、次に腰を蠢かせてゆっくりと抜き差しし始めた。
酒はルックの滾る欲望に絡み付き、その液体を携えて中へもぐりこんで行く。
精液に混じり、液音が激しくなる。内部に伝わり入る濃度の高い酒はじわりじわりと浸透してくる。
「……ぁ…、は…あ、う…あぁ……」
下から吸収するアルコールは急激に身体に回り、身体は熱く火照って行く。
暫く流していた液体を止めて、瓶を床に転がした。
ルックの息も荒く、顔は上気して汗が伝う。
「すご…い、ね……コレ……熱い……」
開いた手を堪らずにフリックの腰に据えて、緩慢だった動きを一転して激しく揺さぶる。
酒の香りと、内部の熱さ…自身に絡みついた焼けるような液体に快楽を追わずにいられない。
「あ……ぁ、…っ……フリ…ック…」
「……っ、ハ…ァ…、っう、く…!!!あ、あ、ぁ…っ!!」
打ち付ける腰の動きに、自らも合わせて互い違いに動かし、深く深く挿入を繰り返す。
む…と、した液と酒の混じりあった香りに、のぼせそうになりながら。
フリックはルックと共に高みへと昇り詰めた。




「……いってぇー……」
頭がガンガン、と割れるように痛かった。この痛みは、どう考えても二日酔いのもの。
「飲み過ぎは身体に毒って事だね」
飄々と言う傍らの少年に、誰が……!!!と掴みかかろうとすると、ぴき、…と走る激痛。
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
ベッドへ突っ伏してもがく。
その頭をちょんちょん、と指がつついて。
あん?と、のろのろ顔を上げた先には満面の笑みがあった。
「新年、おめでとう」
にっこり微笑んで言うルックに、俺は次の言葉が続けれなかった。

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<<言い訳と言う名のコメント(爆)>>

やってしまいましたねー…(笑)何か、思いついてずだだだだだ…と書いてしまいました(笑)書いたの年明けてからです(笑)もうー…年始からこんな事ばかり…(笑)殴り書きなので文が荒いこと…(泣き)下の酒ネタはずっとやりたかった事なんですけどね(笑)新年にかこつけてしまいました…