極力音を押さえたため、ソファに眠る金髪の青年…ディーノはまったく目覚める気配がなかった。
何故だか恭弥が応接室に戻ると、勝手に侵入していた彼は寝ている事が多い。
恐らくは何もする事がなくて、待ちくたびれているのだろうが。
常から、不法侵入を繰り返すのは許し難いと思っていた。

恭弥はディーノの眠るソファの端の隙間に腰掛けて、少し状態を屈め、ちらり…と横を見る。
何も隠そうとしていないそのビデオカメラは。見れば当然視界に入るし、違和感がある。
しかし、向かいのソファの背で、ぎりぎり見える位置と少し離れているため。
あえて視線を向けない限り、気づく事はないだろう。

(……まぁ、気付いても良いんだけど)

恭弥は内心で思うと、こうして近づいても起きようとしないディーノを見下ろし、目を細める。
僕の前で無防備に眠り込んだりしたらどうなるか…、これまで散々な目にあっているはずなのに、懲りようとしない。
本当に学習能力がないというか、それとも…
潜在的にMなのか。

首もとのネクタイに指を引っ掛け、しゅるり…と解くと、床の方に垂れていた手を、ソファの足に括りつける。
緩やかにだが、動かされた腕にさすがに身じろいで。ディーノは、んーー……と、眠そうな唸りを上げた。
覚醒しそうな彼に、恭弥は瞬時に気配を消して。そのまま暫く待つ。
すると、少しだけ顰められていた顔が、次第に和らいでいって。そうしてまた、眠りに落ちて行く。
(危機感ゼロ…)
キツくはしていないが、片手に触れた布から、拘束された事くらい感じ取って欲しい。
まぁ…今は、その鈍さが願ったりだけど。

眠るディーノの下腹部に手を持っていくと。恭弥は躊躇いもなくジーパンのチャックを下げて。
柔らかく布越しに、ソレを撫で始めた。
急激な刺激を与えないよう、ゆっくりゆっくり…、静かな愛撫をしていく。
すると、安らかな寝息を立てていた顔が、少しずつ切なげな色を滲ませて行く。

「ん……」

かすかに、ディーノの口から吐息が洩れた。
眠っていても、快感が身体を伝わる事は知っている。
いま彼は、一体どんな夢を見ているのだろうか。その頭の中を覗いてみたいものだけど。
恭弥は徐々に触れる面積を増やしていき、するり…と下着の中にまで手を入れた。

「…ぁ…、ふ…」

ピク…と、ディーノの瞼が揺れて、息だけのそれに音が付いた。
(そろそろ…起きるかな…)恭弥はディーノを、じ…っと凝視しながら、表情の変化を読み取る。
それでも早急に覚醒させないために。くちゅくちゅ…と、緩い愛撫を繰り返していると。
ディーノの瞼が薄く、開けられた。

「ん…、ぁ…、ヤ」

まだ、半分は夢うつつだ。舌足らずな鼻にかかる声で甘く喘ぐ。
やんわりとした愛撫がもどかしいのか、責めるような響きがある。
それを見て小さくほくそ笑むと。恭弥は上体を屈めて、ディーノの腰に顔を寄せた。
そして手早くソレを取り出し、口に含む。

「…っん、ァッ…、ぁぁ、…ふ…、…っく」

唐突に訪れた濡れた刺激に、急激に性感を高められて、ディーノは高く嬌声を上げた。
ぼんやりとしていた思考は一気に引っ張り上げられたが。
状況を理解する前より先に、脈打つ中心からの快感が身体を支配していた。

「ぁっ、ぁ、ァッ…、ヤ…、め…っ、ぅぅ」

ビクビクと、腰が小刻みに揺れた。
顔を埋めていた恭弥は深くそれを咥え込んで、頭を上下に動かす。
咀嚼するような音をわざと鳴らして、舌を絡められ。
ディーノは我慢する事もできず、一気に絶頂に上らされた。

「っんん―――ッ!!ぁっ…ぁっ、…ァッッ!!」

首をソファの腕かけに乗せて仰け反らせて、腰をぶる…と、震わせると。
口内に熱い液を、ビュクビュク…と、放出する。
喉奥に吐き出されたそれを恭弥は顔を顰めて受け止め。
引っ掛かる味の精液を、ごくん…と飲み込んだ。

「は、ぁ…ハ…ッ…、おま…、ぇ…、起き抜けに、…キっつ…い」
「……今度は寝てる間に、挿れてあげるよ…」

虚ろな目をして、呼吸を荒げているディーノを眼下に、恭弥は前だけ寛げていたズボンを、ずる…と脱がせた。

「ちょ…、待て…って。恭弥…、んとに…お前、唐突なんだから…って。これなんだ」

力が抜けていて恭弥の行動を遮れないばかりか、片手が重く上がらない事にようやく気付く。
視線を下げると。緩く隙間はあるものの、手が抜けられない程度に、ソファの足に括りつけられている自分の手首があった。

「……いつの間に…」
「本当に、あなた…良く今まで生きて来れたよね。せめて身体が触れたら察しなよ」
「―――……悪ぁるかったな…、鈍くて…」

嘲笑ともいえる笑い混じりに言われ、ディーノはム…と、唇を尖らせた。
自分だって、いくらなんでも違う状況だったら起きている。
むかつく言い方をするから、お前の気配だから安心してる、だなんて事。
(絶対、言ってやんねー…)と、ディーノが憮然と睨みつけても、恭弥は気にも止めず淡々と準備を進めている。
……何の準備かと言うのは。この場に置いては、無粋な質問でしかないだろう。

「……っん…、そんで…。進める…つもりか、よ…」
「そうだよ。嫌じゃないでしょ?」

さも当然…という態度が本当にムカツクが。
それが間違っていないんだから、ディーノにとってもどうしようもない。
ただ、腕の拘束は外して欲しいが。聞き入れてはくれないだろうなぁ…。
とディーノが溜息をついて、ころん…と顔を横に倒した時。
ふと…、ある物が目に入った。
(あれ…、あんな物あったっけ…?)
視界に入る、ソファの向こう側の棚。その上に、何気なく置かれている物体。
つーか、オレがさっき来た時にはなかったよな…。あの形状…、あれって…カメラ…?

「……って、まさか。あれビデ…ッ!!ぁっ!!っく…」

目を凝らしてそれの確信が持てそうになって、声を荒げようとした所を。
クリームを塗りつけた恭弥の指が後ろに侵入して来て、妨げられた。
ずく…と、一気に指の根元まで入れられ、息が詰まる。

「ヤ…っ、ぁっ、ぁ…、く…ッ。きょ…ぅ、やっ!…急、過ぎ…」
「感じてる癖に。さっきまで、ゆっくりされるのは、物足りなさそうな顔してたよ?」
「んっ…ぁぁっ!…んっ…な、事…ねぇ…って、っぁ、つ…か、あれ…、お前、ビデ…っ」
「……思いのほか、早く気付いたね。そうだよ、あなたの…想像通り…」

焦った様子のディーノを見て、くく…と喉奥で笑いながら。
恭弥は抵抗を始める前に、ぐり…っと中を抉って黙らせると。
ディーノの片足を床に落とし、もう一方をぐ…っと上げて、自身を突き進めた。

「…っひ…ぁっ…、ぁぁ…―――!!!」

瞬間に内部が膨れる感触に、ディーノは一瞬何もかも飛んで、甲高い嬌声を上げた。
片手片足が、ソファの下についていて。向けたくなくても、身体が横向きに傾いてしまう。
上げられた方の片足をしっかりと抱き抱えられ、ディーノは抉られる内部の熱を感じていた。

「ぅっ…ぅぁ…っ…!!」
「……くっ…、ほ…ら、キツいだけじゃ…ない、でしょ?」

横抱きに抱いて、腰を押し付けると。びくん…と身体が揺れて、ディーノの眉が、ぎゅ…と寄せられる。
恭弥は何とか体制を仰向きにしようとする緩い抵抗を抑えて、上の足を折り曲げて、身体を押し付けた。

「はっ…ぁ、ぁ…ぅ、く…や…、だ。きょ…や、こんな格好…撮っ…」
「……そう。きっと良く…映ってるよ。あなたの顔と…、やらしい…ここ」

必死に顔を逸らそうとしているディーノの、放り出されていた前のモノに、指を絡めると。
「あっ、ぅ…」と短く喘いで、ソファの腕かけに頭を落とした。

ビデオに向かって抱かれている様は、恐らくしっかりと映し出されているだろう。
本当は善がっている顔のアップも収めたかったが。そうすると自分の気が散るからね…
熱い呼吸を大きく吐いて、渇いた喉を唾で潤すと。恭弥はぐいぐい…と腰を押し付ける。
先走りがしとどに流れるディーノ自身を扱きながら。卑猥な液音を鳴らす接合部の摩擦を激しくしていく。

「んっ、ァッ…!ぁっ…、ぁぁ…っ!!…ん…ッ」
「もっと…、もっと声を…あげ、なよ…」

何度も何度も抽挿を繰り返すと、ビデオを気にかけるどころではなくなったのか。
ディーノからは甘く蕩けるような声が、引っ切りなしに上がるようになって。

本当に。後で観るのが楽しみだ…と。
恭弥は恍惚の笑みを浮かべながら、互いに達するまで、抽挿を止めなかった。





「……信じ…らんねぇ…」

拘束を解いてもらい、ぐったり…と、ソファに沈み込んだディーノが発した第一声がそれだった。

「縛った事?寝起きだった事?それともこれ?」

かすれきった声に、恭弥はしれ…と、答えて。手に持っていたデジタルビデオカメラを何やら操作していた。

「全部だよ!全部ー!!!とくに、それ…!!ほんっきで、どーするつもりだ!」
「…別に、どうもしないよ。僕自身の楽しみだから」
「た、…楽しみって…」

んなもんどうするんだよ…。とがくりと項垂れつつも。身体がだる過ぎて、恭弥から奪う気にもなれない。

「…あぁ…、凄い。これは癖になりそうだね…」
「…っ、っ!!お前…まさか、見て…」
「音…、出してあげようか…」

思わず手を伸ばして、カメラを奪おうとしたディーノを、難なくかわして立ち上がり、恭弥はピ…ッ…と、ボタンを押した。

『はっ…ぁ、ぁ…ぅ、く…や…、だ。きょ…や、こんな格好…撮っ…』
『……そう。きっと良く…映ってるよ。あなたの顔と…、やらしい…ここ』

機械的な音が鳴った瞬間。信じられない声がそれから流れてくる。

「〜〜〜〜〜っ!!!!!」

ぼんやりとした記憶の中の、聞きたくもない自分の声に。ディーノは声にならない叫びをあげた。

『んっ、ァッ…!ぁっ…、ぁぁ…っ!!…ん…ッ』

「…いい声」
「わーーーーっ!!!!!!!」

笑みを浮かべながら、カメラの液晶を見ている恭弥の声を掻き消すように、ディーノは悲壮な叫びを上げた。

「どうせなら、一緒に観る?」
「っ!!!観るわけ、ねーだろ!!つか、消せよ!絶対に、消せって…!!…っつ、痛っ」
「ほら…急に動くからだよ。そうだね、消して欲しかったら…相応の交換条件が要るかな」

そう言って、にやり…とこちらを見て笑う恭弥は。
やっぱりいつものように、悪魔にしか見えなかった…。


back


2008.04.18



うーんと、ハメ撮りとちょっと違う気もしないでもないんですが(笑)
固定カメラでSexを撮る事、だよね?(笑)しかしこれ以上の発展は遂げませんでした。
カメラ持ったまま正常位とかも考えたんですが、恭弥変態過ぎ…と思って控えました(笑)
リク有難うございました!こんなんで良かったでしょうか…(笑)楽しく書かせて頂きましたv