腰の帯が締め付けられるようで少し苦しかったが。着物のさらさらした感触が肌に心地良い。
かなり暖かくなってきた今の季節から、夏にかけては良い着衣なのかも知れない。
自分の仕上がりは良くわからないので袖に垂れる布をふりふりとして見ていたら。
前に回った恭弥が「ふーん…」と呟く。
「……こんな鮮やかなの、やっぱ似合わねぇだろ…」
「―――そうでもない」
顔を引きつらせて、値踏みするように見つめる恭弥にぼやくと。意外な言葉が返ってくる。
「ちょっと、じっとしてて」
恭弥はそう言って、紙の包みから桃色の和風のリボンのようなものを取り出した。
「おまえ…」
「いいから。きちんと仕上げたくなった」
もう何でもしてくれ。とディーノは溜息をついてさせたいようにさせる。
恭弥は手を伸ばすと、わし…と金色の髪を指で梳いて、右側の方に流してボンでまとめる。
くるくると巻きつけて最後に蝶々結びにすると。
「……うん完璧」
「何がだよ。何が」
「あなた、もともと綺麗な顔立ちしてるし。ちょっとごついけど、着物ってそーゆうのカバーできるんだね」
「……つまり?」
「可愛いよ、凄く」
真面目な顔をしてそんな事を言うもんだから。ディーノは、ぶは…、と吹きそうになる。
「キツい冗談だなあ…おい」
「いいよ、見せてあげる」
恭弥は部屋の隅に置いてあった姿見を持って来ると、ディーノの前に置いた。
遠慮したかったが。どうにも動き憎くて恭弥の行動に先回れない。
置かれてしまった姿見に映る自分の姿を、恐る恐る見ると。
確かに、想像したよりは不恰好ではなかった。
(………でもなぁ…)
どうあっても見慣れた男の自分の顔に、この衣装は不釣合いだと思った。
髪が横に結われて可愛らしくリボンになっているのも。おかしさの延長でしかないと思う。
恭弥の審美眼おかしいんじゃねぇのかなぁ…、と。ディーノは眉を潜めた。
「…少し、皺になってる」
「ん?そーか?」
そう呟いて後ろに回った恭弥を肩越しに見ながら、もう脱いでも良いんだけどなーと思っていたが。
布を伸ばすように腰の辺りから臀部まで手の平で撫でられて、くすぐったさに身体が竦む。
そのまま、つつ…と、太股を指でなぞられてから、後ろから腕を回されて身体が密着してきた。
「おい、恭弥…」
その微妙な手つきは明らかにわざとで、咎めるように振り向こうとしたら。
「浴衣の感触、気持ちいいね。そう思わない…?」
「……っ…」
肩越しに耳元に囁かれて、ぞく…と背筋に痺れが走る。
その感触を確めるような手付きで太股から尻にかけて撫でられ、浴衣しか身につけていない肌が粟立った。
「お前…、んな姿に……、盛ってんなよ…」
「少し触っただけで、反応するあなたには言われたくないね」
背後から抱き締めた恭弥は、前に手を回すと、太股の付け根から中心に指を滑らせた。
「んっ…」と、短く喘ぐ声が聞こえてディーノの目が閉じられる。
指二本でソレを挟むように沿わせ、浴衣越しに上から下に動かすと、びくん…と身体が震える。
「恭弥…、ダメだって…汚れ…っ、る…」
そのまま握って布ごと扱き出すのを止めようと、ディーノは後ろから伸ばされた手を掴んだ。
まだ力の抜け切っていない状態では、恭弥の動きは妨げられてしまう。
内心で舌打ちし、恭弥はディーノの裏膝を自分の膝で、くん…と押した。
「っわ…!」
「汚れないようにしてあげる」
足への唐突の衝撃に、がくん…と膝を折ったディーノの身体を後ろから支えつつ、畳に腰を降ろさせる。
崩れた体勢に相手が泡食っている間に、手早く裾の合わせを横に開いて、布をはだけさせた。
「ちょ…、待てって!脱いでからで良いだろうが!」
「…それは勿体無いな。せっかく良くできたのに」
「せっかくって…、っぁ…、ちょ…っ」
露わになった生の足を滑らせ、恭弥は膝立ちで身体を支え、めいっぱい腕を伸ばして中心に触れた。
何も身につけていないため、それは簡単になされ、前に逃れようとしていた動きが止まる。
手早くまずは快感を与えてしまおうと、反応を始めているモノの先端を性急に扱いた。
「ぁっ、ぁ……、こら…、きょ…やっ」
「……反応、いいじゃない?あなたも特殊な格好で興奮してんじゃないの?」
「…んっな…こと、あるわけ…っん…」
「そう?凄く気持ち良さそうだけど…ほら、前…見てごらんよ…」
力が抜けつつある身体を恭弥に預けながら霞んでいく思考で(前…?)と、閉じていた瞳を薄く開けた。
途端に、どき…っ、と鼓動が跳ねて。瞼が大きく開けられる。おかげで目の前の光景をしっかりと目に納めてしまった。
そこには片付けられなかった姿見がそのまま残っていて。
裾を大きく両脇に広げ、下半身を曝け出している自分の姿が映し出されている。
「―――っ!!お前…っ、わざと…っ」
とんでもない格好の自分を目にしてしまい、咄嗟に膝を閉じようとするが。
握っていたモノの手に握力を篭められ、力が抜けてしまう。
「ぅっ…ァッ…!!」
「……、イイ顔…ぞくぞくするね…」
眼前の鏡に移される嬌態に欲情した声で、恭弥はディーノの耳奥に吹きかける。
感じ始めた身体は、耳にかかる低い声も快楽の一部になって。びく…、と顎が上がった。
しどけなく開かれた足の中心で、屹立したモノから透明な先走りが溢れている。
ぬらぬらと濡れるそこに、快感に喘ぐ浴衣姿がどうにもなまめかしく。恭弥の興奮を増殖させていた。
女物の浴衣が倒錯的で淫靡さが増している気がする。
色素の薄い肌が黒地に良く映えて、選択した物が間違っていなかったな、と思っていた。
「…いやらしい…格好。ちゃんと見える…?」
「…ぁっ…ぁ!……、んっ、ぃ…ヤ…だ、見たくな…、」
「どうして?いい顔してるのに…」
背けようとする顔を、恭弥は顎を捉えて正面に向ける。
ぼんやりと霞む視界に、朧気に映る自分の姿を捉え、ディーノは羞恥で身体が熱くなる。
それが快感を増長させるような気がして、たまらず瞳をぎゅ…と閉じた。
「…見てればいいのに」
その所作に、くす…とほくそ笑み。恭弥は前を愛撫する手を早めた。
くちくちと先走りの淫猥な液音が響いて、快感を募らせていく。
だんだんと快楽に溺れ初めているのか。
閉じがちだった膝が、徐々に広げられていって爪先が伸び、ひくひくと震え始めた。
「ぁっぁ…、イっ…く…、きょぉ…やっ…」
「いいよ。イク顔…晒しなよ…、僕に見せて」
「や…っ、ぁっ…見る…な、っ…ぁっぁぁ、っ!!ん――っ!」
切羽詰まった声に促すように先端の窪みを親指でぐり…と圧迫すると。
たまらず僅かに腰を浮かせて、高い嬌声と共に身体が痙攣し。手の中に精液を吐き出させる。
びくびくと震える膝がだらしなく投げ出されて、淫らな姿が鏡に反射し。ごくり…と、恭弥は唾を嚥下した。
絶頂に弛緩しているディーノを全身で押すと。抵抗なく前に身体が押しやられた。
腕を畳みに着いて上体が伏せられ、恭弥の方へ腰を突き出すような格好になる。
覆っていた浴衣を腰の位置までまくると、濡れそぼった下肢が晒された。
達した感覚が残っているのか、空気に触れた入口がひくひくと引くついている。
「ぅぁ、…ぁ…」
「ホント…、良い眺め…」
熱く吐息を吐いて恭弥は前を寛げて自身を取り出すと、手の残滓を塗りつけた。
双丘を掴み指でそこを広げながら先端をあてがう。
慣らしていないが、これだけ弛緩しいれば大丈夫かなと。
恭弥はしっかり濡らした自身を、ぐ…と押し込んだ。
「っぃ…ぁ…っ、ァッ!!ぅっく…ッ」
「ちょっと…キツ…、でも…いけそう…だね」
入り込んでくる熱さに身体を強張らせかけるが、すぐに前に伸ばされて扱かれるモノに力が抜ける。
柔らかくなっていく内部に熱い息を吐いて、恭弥はぐぐぐ…と挿入していった。
「は…、ぁっく…、ぁ、ァ…ッ!」
慣れた感覚に、窮屈なだけじゃない快感が中から生まれて。ディーノの嬌声には甘さが含まれていた。
蕩け出す中に抽挿を始めると、濡れた音が接合部から漏れ出す。
それに呼応するように、ディーノの声も耳に響いてくる。
「ぁっ、ぁっ…ぁ…、ぅ…、んっ」
「ねぇ…、腕に力入れてちゃんと四つん這いに、なってよ…」
畳に上体を伏せて喘ぐディーノの腰をぐい…と、引いてそう声をかけると。
ディーノは、快楽に溺れた思考で意味を捉え、懸命に腕を張って身体を起こした。
身体が上がり動かしやすくなった体勢に、恭弥は臀部を両手で掴んで抽挿を激しくする。
「ぁ!ァ…ッ…、はっ…ぁ、ぁっ…ぅ!」
「……んっ…、そう…ちゃんと…腕、力入れて…、崩しちゃ…ダメだよ」
(じゃないと…、見えないからね…)
穿たれてつんのめりそうになる身体を必死で支えているディーノを、恭弥は後ろから眺め。
それから視線を前に移す。目を閉じて善がっているディーノは気付いていないが。
そこにある鏡に、しっかりと後ろから犯される姿が映っていて。
普段見れない姿に恭弥は口端をつり上げ、艶然と笑みを浮かべた。
鏡に映し出される悦楽の顔に、ぞくぞくと中枢が刺激されて身体が昂ぶる。
湧き起こる興奮のまま、何度も何度も。ディーノの内部へ自身を突き上げた。
「は…っ、ぁ、ぁっ!!…んっんぅ!!きょ…やっ、恭弥…、も…っ」
乱れた呼吸と高い嬌声を上げ、駆け上る快感のままにディーノは昇りつめていき。
二度目の精を弾けさせ、きゅうう…と内部を収縮させた。
締め上げる中襞に促されて、恭弥も奥に熱い精液を吐き出して。包まれる恍惚に、目を閉じた。
*
「……ったく…、せっかく綺麗な着物がしわくちゃじゃねーか…」
行為の後、気だるげにディーノはそう呟いて、脱いだ後の浴衣を手に溜息をつく。
汚さないような体勢だったからか、幸い嫌なシミなどは付いていないが。
着崩れたまま行為を続けていたため皺はいかんともしがたい。
憮然とするディーノをよそに恭弥は飄々と、
「クリーニングに出せるから、大丈夫だよ」と言って、浴衣を適当にたたんでしまった。
「これ…、あなたにあげるね」
「はぁ!?……んなもん貰ってどうすんだ!もう着ないぞ?!」
「夏になったら、これ着せたあなたと祭に行きたい」
「じょ…冗談じゃねぇっつーの!!」
「僕と一緒に、群れがはびこる祭に行く機会なんて、一生無いかも知れないよ?」
「…………………」
そう言われて、ぐ…と。考えてしまうディーノは。
きっと夏になったら、恭弥の思惑通りにそれを実行してしまうのだろう。
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2008.03.23
異様に長くなって困りました(笑)お題が主じゃない…、無駄な部分が多すぎる(笑)
でも地下は、とにかくエロを楽しく書きたいがための場所なので、良いかと(をい)
それにしても、変 態 ですね、ここの恭弥さんは(笑)全身鏡って言ったら本当は背面座位とかやりたいんですけど(爆)
体格差がいかんともしがたい中で萌えを追求したらこうなったと。仔ディノでやりますけど背面座位(え)
着物の下に下着をつけないとか、昔はあったそうですが現代ではそらー嘘っぱちです。確信犯です。
でもきっと祭の時も、下は何も着けないまま一緒に行くんすよ(笑)
実際、女に見えるかどうかは置いておいて(笑)恭弥の目には似合うように見えるらしい。
可愛いとかのたまわってて、こっちが恥ずかしい(笑)でも勝手に指が…(呪いだ)