8:体は正直だね



立てた両膝の間に納まって、すっぽりと後ろから包み込むように抱き締められていた。
普段なら体格差ゆえに、そんな体制はディーノからしか出来ないはずなのだが。
今は恭弥が後ろで、ぎゅぅぅ…と腰を抱かれ肩に顎を乗せられている。

ディーノは今、恭弥よりも小柄になっていた。

またもや10年バズーカ…と思いきや。
今回はリボーンの妖しい試作の薬によるものだ。
ディーノは、記憶を残したまま身体だけを10年前の姿にするという何とも妖しい薬の実験台になっていた。

潜入捜査やら敵を欺く為やらと使い道はあるらしい。
見事成功した効果に満足していたリボーンだったが。

「いつ戻るかまでは、まだ試験段階だ」

と無責任な事を言って去って行った。戻る時間も報告しろと残して。

(それは良いんだが、何で恭弥を連れてくるかな…)

先ほどからずっと後ろから抱き締められた格好で、ディーノは溜息をつく。
何が気に入ったのか全身でディーノを包み、すりすりと肩に頭を擦りつけている。
自分より小さい感覚が楽しいのだろうか。
良い加減飽きてきた…というか、眠くなってきたディーノはこっそり欠伸をした。

「眠っても良いよ」

それに気付かれて耳元で囁かれる。
体制によるものだが、思ったより耳の側で聞こえる低音に、背筋がぞくりとした。

「じゃあ遠慮なく…。つーか、恭弥…楽しい?」
「あぁ、楽しいね。こんなふうに抱き締めれるのはあんまりないから」

思った通りの感想を聞いて、その声が確かに楽しそうな色を含んでいて。
それなら良いか…と、ディーノは微苦笑する。
リボーンの悪戯にも困ったものだが、恭弥が楽しいならそれでいい。

そう思い身体の力を抜くと、最近の寝不足も祟ってすぐに眠気が襲ってくる。
眠って良いと言われたし背中を包まれる暖かさが心地よいし。
片手で髪を撫でられて、何だか恭弥は優しいし…と、思いながら。
ディーノはうとうと…とまどろみはじめた。

* * *

「…ん…、ぁ…ふ」
「ふふ、眠ってても反応してる…」

素直に眠りはじめたディーノを暫く見ていたものの、全く反応がないのはやはり面白くなかった。
腕の中にすっぽりと納まるサイズは、今まで逆にされていた事を思うととても楽しい。
暫くの間だろうが、ディーノより上に立てたような気がして優越感を覚えていた。

話しを聞いた時にすぐさま自分に引き渡して貰って良かった。
赤ん坊とは裏で取引をしたから、今度面倒な事を引き受けなければならないけど。
それと引き換えにしてもこの状況は楽しい。
どうせなら有意義に、いつもは出来ない事をやりたかった。

腰を抱いていた手をするすると下に降ろし、ズボン越しにディーノの中心を擦る。
もう片方の手はシャツの中に潜り込ませて、胸の突起を緩やかに撫でた。

すっかり眠り込んでいたディーノは、気持ち良い夢でも見ているのだろうか。
覚醒はしないものの愛撫を甘受して甘い吐息を漏らしていた。
起きないように、急激な快感にならないように。
やんわりとした愛撫を続けていると、ズボンの中が窮屈そうに硬くなってくる。

窮屈で目覚めてしまわないよう、そ…っとチャックを降ろしてソレを取り出した。
年齢的には大きい方だろうか。日本人とは発育が違うのだろう。
それでもいつもより小振りになっている可愛らしい自身が、ちょこんと顔を出す。

「ぁ…、んン…、ふァ…」

直接触れると鼻にかかった吐息が漏れた。
寝ているからか素直に吐息が漏れて耳を擽る。
肩越しに表情を窺うと、頬は上気して唇を薄く開け、切なげに眉が僅かに寄っていた。
感じている顔に恭弥の鼓動が上がる。

精悍で綺麗な顔は、今はあどけなくてまるで女の子のような容姿だと思う。
それでもやっぱりディーノで。
恭弥の愛しい彼の姿だと思えば、可愛らしくて好ましかった。

「ん…ぁ、ぁァ…、やぁ…」

寝ていても感じている身体は、先端から先走りが滲み始める。
それをくちくちと撫でつけていると、快感が募って切ないのか、ディーノが身じろいだ。
起きてしまうかな…と思うも、そろそろ恭弥も手加減が出来なさそうだ。

このあどけない顔をもっと快感に歪めたかった。
過去に戻るのではなく、肉体を戻しているだけだから。
今までした行為の快楽は覚えているはずだ。

恭弥はディーノのズボンと下着をずる…と降ろすと、本格的に愛撫を始める。
脱がされる動きは大きくてさすがにディーノの意識も浮上してくる。

「あ…何…、下がすーすーする…、ん…ぁ」
「…まだ寝てて良いよ」
「ん…眠い、けど…って…ぁっん…きょ…や、何して…」

寝ぼけた頭が次第にはっきりしてきたようだ。
始めはふやけていた言葉が音を成して行き、己の状況を見ると、びく…と身体を震わせた。
やはり起きている時の方が感度は良いらしい。
同じ愛撫にも反応が著しく腰をびくつかせた。

「ん…っとに、こんな悪戯ばっか…して!…ぁっ…、離せって…ばっ」
「今離されたらあなたの方が困ると思うけどね」

すっかり目覚めたディーノがじたじた動くのも、今の体格差ではあまり効果がない。
難なく抑え込んで自身をきゅ…と握ると、抵抗の力が抜けていく。
どうやら快感も幼い身体には過ぎるようで。ただ前を擦っているだけなのに随分と感じている。
反発しているのは気持ちだけだ。

「ふふ…身体は正直だよね?」
「うるさっ…い!…はっ…ぁ、ァ…何か…変、…んっぁ…」
「凄いね、いつもより早い。もう出ちゃいそうだ…」
「だって、…我慢できな…、ぅぅっ…ぁ、んとに…イっちま…ぅ」
「構わないよ。出しなよ」
「――!…んっぁ、あぁっ」

快感に瞳を潤ませて訴えるのにも構わず恭弥の手は容赦なく感じるポイントを責める。
促すように先端をぐりぐりと指先で抉れば、大きく身体を震わせて常よりも少ない量の精を吐きだした。
快感の余韻に、びくんびくん…とディーノは身体を痙攣させている。

「声も高いし、感じやすいし…いつもより可愛い」
「ぅ…るさいっ…、ったく…小さい子に欲情する趣味でもあんのか」
「あなただからだよ?」

簡単に達した照れくささに頬を膨らませて言えば、しれ…と返答が返ってくる。
そう言われてしまうと、ディーノとて嬉しくないわけじゃなく。かぁ…と頬を赤らめた。
そんな表情も今の姿だと余計に可愛らしくて仕方ない。
恭弥は置いてあったボトルを手に取ると、ディーノの下肢に垂らし始める。

「ぁっ…、んンっ…やっぱ、…やんのか?」
「当然。せっかくの機会だしね、身体の記憶はあるだろうし、そう辛くもないと思うよ」
「そりゃあ…」

出せると言う事は身体は問題ないだろうが。サイズ的には問題あるんじゃないだろうか。
ぬるぬると指で後ろを撫でられるのに、ディーノはぞわりと肌を震わせる。
滑りの良いローションを存分に付けて、指先がつぷ…と入ってきた。

「あぅ…、ぁ、ぁ…、は…ふ」
「柔らかいけど、狭いね」
「んっ…仕方無い、だろ…」

慣れた行為で力の抜き加減は知っていて、指を押しのけるような事はなかったが。
絡みつく内壁は常よりも狭く、解しても広がらないんじゃないだろうか。
最後までは難しいかな…と思いつつ、恭弥は根気よく指を抜き差しして解していく。



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2009.11.17