そうして会話を始める声は、癪なくらい平常と同じ声で。
とても同時にディーノの中で、卑猥に指を動かしているとは思えない。
(こいつ…っ、信じられねぇ…!!)
咄嗟に口に手を当てて、声を噛み殺している自分がおかしいみたいだ。
『用があるから、この番号にかけてるんです!今どこに居るんですか!?』
冷静な声に、ムっとしたのか、綱吉は結構な剣幕で言い立てる。
それに雲雀も眉を寄せて、少し声のトーンを落とした。
「……どこって。君の屋敷の部屋だけど?それ以上言う必要があるかい?」
僅かだったが携帯からツナの声が漏れてくる。
恭弥の冷たい、いつもの無愛想な言葉に。電話の向こうではこちらの様子はわからないだろう。
「……っ、…、っ〜〜〜っ!!」
そう。ディーノさえ、声を上げなければ。
『ディーノさんの部下が、彼を探しているんです。…雲雀さん、一緒に居るんじゃないですか?』
「―――何故、そう思う?」
『勘です!…でも、こーゆう勘は、外れた事ないし、状況的にもそう考えるのが普通ですから』
「ボンゴレの超直感かい?…それで?一緒だったとして、君は僕の邪魔をするの?」
だんだんと雲雀の声色が低く、押し殺されていくのを。
電話の向こうと、彼の下で必死に耐えているディーノが聞いていた。
(まずい…って、ツナ…!あんま、逆なでしないでくれよーー!!)
ディーノは祈るような気持ちで、電話のやりとりを聞いている。
何といっても、恭弥の苛立ちが伝わってくるのだ。ダイレクトに指から!!
『じゃ…邪魔するつもりはないです!ただ、対面は考えてください!
ここに居る限り雲雀さんはボンゴレの人間になるんですよ!?せめて、一言伝えてくれれば…』
「……知らないな、そんな事は僕には関係ない。…それにしても、君も無粋だね、僕らの関係は知ってるだろうに」
『え?関係って…そ…、それは知ってます、けど』
そこで綱吉は、雲雀の声から不穏な色を感じ、口籠った。
普通に電話に出て、普通に話しているから。何も思わなかったけど。
雲雀の口ぶりから、嫌な予感がする。これも超直感のおかげだとしたら、ちょっと複雑だ。
「ほら、一言伝えて。僕と一緒だから、暫く待ってて…ってね」
そう言った後、恭弥は携帯をディーノの口元に持って行った。
当然、挿入した指はそのままで。
(お、ま…え…!!)
ディーノは驚愕に目を見開いて、恭弥を見上げるが。見下ろす黒い瞳は冷たく、彼の不興を表している。
(オレのせいじゃねぇーのに…)ディーノは泣きたい気持ちだったが。
向けられた携帯から『ディーノさん?大丈夫ですか?』と気遣わしげに聞こえてきては。何も言わないわけにはいかない。
一応、指の動きは止めてくれているから。
何とか唾を飲み込んで、平常に聞こえるよう努めてディーノは答えた。
「だ…、だいじょうぶ、だ。何でもない。……その、突然消えて悪か…った」
『いえ。俺こそすみません、考えなしに連絡しちゃったけど、まずかったですか…?』
不安げに伺ってくる弟分に、ディーノは微苦笑する。
当然、ツナが悪い事は一つもないけど。そこで謝罪する彼の人の良さが嫌いじゃない。
ふ…、と微笑んで「ツナは悪くないって」と、柔らかく言う。
「それより、すまなかったな心配かけて。聞いた通りオレは恭弥と居るからさ、もう暫…く…っ、ん…っ!?ぁっ、ああぁっ!!」
『えっ…』
唐突に電話の向こうから聞こえた叫ぶような声に、綱吉はびく…っ、と携帯を持つ手が揺れる。
「やっ…、め…っ!ぁっ、…ぁぁ!…く、っん」
続けて聞こえてくる甲高い声は。どう考えても情事のそれにしか聞こえなくて。
そう悟った綱吉は、顔面がかぁぁぁ…!と熱くなるのを感じていた。
まさかとは思ったが。ディーノさんが通話に出た事で可能性を消したのに…!!
『な、な、な…』
「……聞いてる?沢田綱吉」
一変して冷静に響く雲雀の声に、綱吉の脳内はパニック中だ。
わなわなと手を震えさせて。相手が雲雀だという事も忘れて叫んでいた。
『きっ、聞いてるって、嫌でも聞こえてくるんですけど!?昼間っから何してるんですかー!!貴方は!!』
「だから、無粋だって言ったんだ。2人で居る事がわかってるなら、気をきかせてくれれば良いのに」
『そ、そんな無茶な…』
「邪魔をした罰として、そこで聞いていなよ。沢田」
『は!?じょ、冗談じゃ…』
「いいかい?勝手に通話を切ったら、咬み殺すよ?」
『……なっ』
「もう一度言う。勝手に切ったら…咬み殺す」
本気で殺気を込めて恭弥は低く唸ると。携帯をディーノの横に、ぽい…っと放った。
「……っぁ、お前…!!信じらんね…っぇ!!」
非難めいた声がする方を、恭弥が見ると。涙目になって睨み上げるディーノと視線が合う。
ぜいぜい、と呼吸が荒く顔が蒼白だ。急激な圧迫に身体がついて行ってないのだろう。
それも仕方ない事。ディーノが綱吉と会話している時、恭弥はあろう事か唐突に自身を挿入したのだ。
いつの間にか恭弥の方にクリームが塗られていて、痛みは伴わなかったが。
ゆえに引っ掛かりもなく全て納められ、電話に気を取られていたディーノはたまったものじゃない。
声を抑えるどころではなかった。
「一言って言ったのに、たらたら話してるからだよ、もう待てないって…言ったでしょう?」
「だから…って、ぅっ…、アッ」
ぐい…と、腰を揺らす恭弥に堪らず声を上げそうになって。ディーノは再び口を手で覆った。
さっきのやりとりを思い出したのだ。自分のそばには繋がったままの携帯がある。
もしツナがまだ聞いていたら…
(それこそ、冗談じゃ、な い…!!)
「ふうん…、頑張る気なんだ?面白いね、…どこまで耐えられる?」
「……っ!!んっ…んん、〜〜っ、ん…ぅ…」
懸命に声を殺そうと両手で口を押さえるディーノに、恭弥は艶笑を浮かべた。
内部を抉るように激しく腰を打ち付けると、放り出されていたディーノの前に手を添える。
しとどに流れる透明な液を手のひらでなすりつけ、くちゅくちゅと液音を鳴らして、熱いモノを愛撫する。
「……ふっ、…ぅぅ、…んっ、く、…はっ、…ぁ」
「気持ちいいんでしょ…?我慢せずに、声を出しなよ…ディーノ…」
「……っふ、ぁ…、ぅ…」
ぐぐ…と、身体を密着させて深く入り込むと、恭弥はディーノの耳元に息を吹きかけながら囁く。
脳髄に染み込む低音に、頭がくらくらする。
恐らくわざと、快感を煽る恭弥の所作に、必死に覆っていた手が小刻みに震えた。
その手を恭弥はぐい、と掴むと片手で頭の上で固定してしまう。力が入らなくて、上からの押さえつけを跳ね除けられない。
「ぁっ、…嫌…だ…っ」
「何が嫌?こうするのが?僕が嫌なの?」
「違…っ、お前じゃな…っ…ん、…声…が、聞か…れっ」
「いいじゃない…、聞かせてよ。あなたの声…」
普段より甘く掠れた吐息が、耳に直接送り込まれて。
先ほどから止まらない中の摩擦と、前の愛撫がたまらなく、気持ちよさに思考が朦朧としてくる。
「もっと聞かせて、じゃないと…イかせてあげないよ…?」
「ァッ…や、…ぁっ!痛…っ、きょ…やっ離し…」
それでも僅かに残る理性で唇を噛みしめたのを見て。
恭弥は愛撫していた前の手に、ぎゅ…と握力をかけた。根元に指をかけて。
「ぅっぁ…、ァッ、離し…てっ、恭…弥」
「ふ…、あなたの中キツくなった。すごく熱いね…僕だけ、先にイきそう…」
「やっ…ヤだ…。置いて、…くな…っ」
小刻みに揺すってそう言うと、途端に舌足らずな涙声が聞こえてきた。
(もう…飛んでるかな…)上がる嬌声に余裕がなくなってきて。抑えるのも忘れているようだ。
「一緒にイきたいなら、…言いなよ。ディーノ…」
「ん、…ぁ、ぁ…ァッ…ぅ。…ぃ…き、た…っぃ」
「……もっと、ちゃんと…。言って」
「あ、ァッ、…んっ…い、きたい…っ、イ…かせて!…きょぅ…や…ぁっ」
高く鼻にかかる甘い懇願の声に、恭弥の身体にぞくぞくと、歓喜が走る。
我慢していた自分の感覚が一気に引きずられて、そのまま高みへ駆け上がっていった。
「いいよ…、イき…っ、なよ…っ」
「んっ、ぁっあああ、…ァ――ッ!」
ずく…と、最奥へ熱い自身を突き進め、恭弥が中に熱い白濁を放ち、握っていた根元を離すと。
中に溢れた熱さに促され、ディーノは引き攣った喘ぎを上げて達した。
暫く身体を強張らせてから、くた…と、ソファに身体を投げ出す。
恭弥は荒く息を吐きながら、ディーノの顔の横にある携帯を取った。
「……繋がってるね、沢田?」
『………っ!!!!』
通話が切れていない事を確認すると、恭弥は話し掛けた。
向こうで息を飲む音が聞こえた。それと、かすかに聞こえる荒い呼吸。
それの意味を悟って、恭弥は、にや…と、口端を上げる。
「これじゃ、罰にならないな…。楽しんだかい…?あの声、腰に来るでしょ…」
『しっ…知りません…!!!』
裏返った声が受話口から聞こえると、プツ…!と通話が切れた。
その慌てた声に、恭弥は、くっくっく…と、楽しげに低く笑うと。ペロリと唇を舐める。
「……これでもう、二人で居る時に連絡しようなんて、思わないだろうね」
半分意識のないディーノの頬を愛しそう撫でて。恭弥は額にキスをした。
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2008.05.01
またもや長いし!しかもエロばっか(笑)あー!もうドSな子って動かしやすいわね!(爆)
Sってゆーか本当に変態鬼畜ですね!(笑)いや、楽しかったです(←おま)
ホント、綱吉ごめんよ…(笑)実は携帯を投げた後の、綱吉サイドの話があります。ちみっとね(笑)
いやー…重ね重ね、ごめんよ綱吉…(笑)
大変な事になっていたツナ君の心情を知りたい方は、下の方へスクロール(笑)
あ、ツナ崩壊してますから!!ツナ君は可愛い、純な子なのvvvって人は見たら駄目です!(笑)
ツナの受難(笑)申し訳ございません!!(笑)うちのツナ君は、攻ですよ(笑)
『……っぁ、お前…!!信じらんね…っぇ!!』
ディーノさんの罵倒の声が聞こえる。
俺はそれに激しく同意だ、ホントに雲雀さんって信じられない…!!
こっ、このまま、聞いてろって?人様のsexの様子を?!冗談じゃない…!
いくら咬み殺すとか言われたって、そんな脅しなんかに乗るものか。
俺だって少しは成長してるんだ。突っぱねる事くらい…
できるんだから!と、拳を握ろうとして。
携帯の向こうから息を潜めた吐息が聞こえる。
そのあまりに悩ましい声に、ごく…ん。と思わず生唾を飲み込んでいた。
「はっ」
おおおお、俺…何考えてんだぁ!!!
これ、ディーノさんだぞ!?憧れの人だぞ?
そりゃ…ディーノさんってちょっと色っぽいし、綺麗だし…
……
……
さっきの声、凄かったな…。
何か突き抜けるような、そんな…
『ふうん…、頑張る気なんだ?面白いね、…どこまで耐えられる?』
『……っ!!んっ…んん、〜〜っ、ん…ぅ…』
あまり聞こえなかった雲雀さんの声が、低く漏れてきて。
それに呼応して、ディーノさんの詰まった息が聞こえてくる。
うっわ。ヤッバイ…ヤバイって、本当。
耐えてるのだろう、鼻にかかった吐息が。余計にエロいと思ってしまった。
脅しになんて屈しないって、さっきまで切ろうとしていたのに。
綱吉はすっかり忘れて、携帯の向こうに聴覚が集中してしまっている。
それから、少し曇った声で何か話してて、状況は良くわからないが。
綱吉は、どうしようどうしよう。と心中で焦っていた。
こんな事をしてる場合じゃないけど…!!!
ううう、憧れの人の声がヤバ過ぎて、切るのが勿体無い……なんて。
(俺、本当に何考えてるんだよーー!!!)
『……ふっ、…ぅぅ、…んっ、く、…はっ、…ぁ』
『気持ちいいんでしょ…?我慢せずに、声を出しなよ…ディーノ…」
心でじたじたと葛藤している間にも、携帯からは情事の声がありありと聞こえてきた。
ディーノさん…すっごい、色っぽい…こんな声、出すんだ…
それに雲雀さんも、何て熱い声なんだろ、普段の冷めた様子から考えられない。
sexを覗き見ているような罪悪感に捕らわれながらも、情熱的に交わされる声に、ドキドキと身体が熱くなる。
『ぁっ、…嫌…だ…っ』
えっ。嫌だって、嫌って…何してんの!?雲雀さぁぁぁん…!!!!
わー!!もう、ホント、やっばいよこれ!俺どうしたら…!?
途切れ途切れに聞こえる声に、綱吉の心中は混乱中だ。
通話を切らずに耳を外せば良いだけなのだが。平常心を失っている、綱吉は考えもつかない。
『もっと聞かせて、じゃないと…イかせてあげないよ…?』
『ァッ…や、…ぁっ!痛…っ、きょ…やっ離し…』
顔を近づけたのか、雲雀の擦れた声も聞こえるようになって。
ついでに、押さえていたディーノの声も、どんどん高くなってくる。
ほんと…に。俺…、やばい。物理的に。
身体が熱くなるのを感じて、綱吉はごくん…、と渇いた喉に無理矢理唾を飲み込む。
『ん、…ぁ、ぁ…ァッ…ぅ。…ぃ…き、た…っぃ』
『……もっと、ちゃんと…。言って』
『あ、ァッ、…んっ…い、きたい…っ、イ…かせて!…きょぅ…や…ぁっ』
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
なんて、声…を!!!
あぁ、もう…っ本当に、たまらないけど。
そんな声、出させてる雲雀さんも、凄すぎますぅぅ…
わなわな…と、携帯を持つ手を震わせていると。
一番高い、ディーノの嬌声が耳に響いて。そうして、音が消えた。
(……ううう、最後まで聞いちゃった…)
どよーん…、と頭垂れていると。
ふいに聞こえた、雲雀の声に、がば…と顔を上げる。
『……繋がってるね、沢田?』
「………っ!!!!」
俺は咄嗟に何も言えなくて、驚いて息を飲んだ。
あぁ、きっと。こっちの様子は悟られている。それを現すように、雲雀は続けた。
『これじゃ、罰にならないな…。楽しんだかい…?あの声、腰に来るでしょ…』
「しっ…知りません…!!!」
俺はそれだけ言うのが精一杯で。
携帯を切って投げ出すと、部屋から駆け出して行った。
トイレへと。