10:僕以外には許すな


全く迂闊だったと思う。

身体を巡る薬の効果に、ディーノは内心で舌打ちしていた。
ボンゴレ主催の、ボンゴレの同盟内でのパーティで。
まさか給仕に薬を盛られるとは思わなかった。

実はこういう事は初めてではない。
見た目も秀麗で若いディーノの事だ。昔は男女問わず、ディーノ自身を狙う罠が絶えなかった。
ボスになって数年は弱小ファミリーだったし、侮られていた事も原因だった。
たださすがに、成長して力をつけた近頃はなかったから。
油断していたのは確かだったが。

(こいつ、後で覚えとけよ)

給仕に仕込ませたのは、十中八九、先ほどから様子を窺いに来ている壮年の男。
確か同盟内でもかなり下の方に位置していたはずで、名前も良く覚えていない。
大丈夫ですか?と空々しく声をかけてきたから。
全く変化のないように笑顔で「何がですか?」と答える。
完全なポーカーフェイスに、相手の男の笑顔は引き攣った。

「今から、ドン・ボンゴレに挨拶に行く所ですが。一緒に行かれますか」

心中で(バーカ)と毒づきながらそう言って、にっこりと笑ってやった。
男は動揺を丸出しに冷や汗をかき、遠慮します、と去っていく。
その顔をしっかり頭にインプットする。オレに仕掛けた事を、後で後悔する事になるだろう。

ふう、と溜息をついてから、ディーノはドン・ボンゴレ…すなわち、綱吉の所へ向かった。

高校卒業とともに正式にボスに就任してから、まだ日も浅かったが。
綱吉はすっかりボスの顔で、パーティ客に挨拶をしていた。
近づいたディーノを見ると、周りに断ってから足早に寄って来た。
親しげに笑いかける人懐っこい笑顔は変わっていない。

「ディーノさん、どうしたんですか?何か用でも…」

挨拶は終わっていたため、不思議そうに言う綱吉の顔色が一瞬だけ固まる。
退室したいんだが…と用件を伝えるよりも先に、綱吉は後ろを向いて
「山本、少しこの場を任せても良いかな。彼と仕事の話があるんだ」と告げていた。

(仕事…?)

そんな話は何も言っていなかったが。
「あぁ、わかった」と言う山本の返事を聞くなり、綱吉は笑顔のままディーノを外へ促した。

「おい、ツナ…」
「いいから付いてきてください」

小声で慣れた呼び方をするディーノを制して、綱吉は会場から出た。
意図がわからなかったが、もともと退室するつもりだったから素直に付いていく。
会場を一歩出た瞬間、ぐら…と、ディーノを眩暈が襲っていた。
周りの視線がなくなった為か一気に気が緩んだらしい。

「う…」
「だ、大丈夫ですか。この先に休める部屋があるから、そこまで頑張って」

一転して心配げに声をかける綱吉に、ディーノは(気づいてたのか…)と内心感嘆していた。
あの場では完全に隠していた自信はある。恐らく、彼以外に不審に思った者は居ないだろう。
もともと聡い方だったが、直感も更に鋭くなったな。
綱吉に身体を支えられながら、ぼんやりとディーノは思っていた。





部屋の中のベッドに倒れこんで、ディーノは苦しげに眉を寄せる。
じわじわと身体を侵食していく薬に息が乱れる。予想はしていたが、媚薬の類だったのだろう。

「本当に大丈夫ですか?具合が悪かったなら、欠席してくれて良かったのに」

テーブルから水を持って来た綱吉が、心配そうに声をかけてくる。
違うんだ…と、苦笑したかったが、それもままならない。
コップを受け取る事もできず、腕で顔を覆って懸命に息を整える。

「ディーノさん…、医者を呼びましょうか」

その様子を見て、気遣わしげに綱吉が言うから。ディーノはふるふる…と緩く頭を振った。

「でも」
「い…らない…。違うんだ、これ…」
「ディーノさん?」
「―――…薬、盛られたらし、くて。あの中に居た…奴に」
「えっ!?」

途切れ途切れに言う言葉から意味を察して、綱吉は驚いた声を上げる。

「ど、毒とかじゃないですよね!?…でもそれならなおさら…っ医者…」
「……い、から。毒じゃな…、ぃ。そのうち…納ま…っ…ぅ…」

いよいよ全身に回り始めた効果に、ディーノは小さく呻いて両腕を抱えた。
身体の震えを抑えるように握力をかける。会場で必死に我慢してたせいで、反動がきているようだ。
体内の熱さが苦しくて、意識が朦朧としてきていた。ヤバイなと思ったが、どうしようもない。

耐えるように、顔を赤らめて息を吐くディーノの表情がどうにも艶っぽくて。
綱吉は不謹慎にも鼓動が跳ねた。

(何考えてんだ…)

打ち消すように頭を振り、とりあえずジャケットだけでも脱がせてあげようと触れた時。
びくん…っ、とディーノの身体が震えた。

「ん…っ、…」
「ディ…ーノさん、薬ってまさか…」

色の含んだ吐息に、さすがに綱吉も感づいてしまう。
痺れ薬とか睡眠薬とかでもなく、これは…
そう言った類のものだと気付いて、綱吉は動揺して表情が引き攣る。

これでは何ともしてあげれないじゃないか。
苦しそうなのを見ていると辛いが、もしかすると俺が居ない方が良いのかも…

と綱吉がベッドから離れようとした時。ディーノの手が綱吉の腕を引っ張った。
えぇぇぇぇ…と、思っている間に綱吉は腕の中に抱きこまれてしまう。

「ディーノ…さ…」
「きょ…、ゃ…」

朦朧とした声で呟いた声に、綱吉はぎょっとする。
もしかして意識が飛んでる?…誰かの名前みたいだけど、恋人と間違えてるのかな…。
耳元の熱い息にどぎまぎして、綱吉は動揺しまくっていた。
(おおおおお、俺どうしたら…)
そんな心中など露知らず、ディーノは悩ましげな息を吐いて、更に抱く力がこめられた。

「熱い…、苦しい…、何とか…して…、恭弥…っ」

(えっ)

今度ははっきりと聞こえたその名前に、綱吉は驚愕して目を見開いた。
きょうや、恭弥って…ヒバリさんじゃないか!?
仲が良いとは思ってたけど、まさかこの2人そーいう関係なんだ?

鼻にかかる甘く囁く声は、ただの愛弟子にかける声じゃない。
知らなかった事実に綱吉はドキドキするが、違う意味でもドキドキしていた。

苦しいのはわかるけど、ぴったりと身体をくっつけられたこの状況は非常にマズイ。
昔から憧れていた人だったし、実は一時期仄かな思いを持った事もあったから、嫌悪感とかはなく。
むしろそういう対象としても見れてしまうからよけいに問題だ。

これで知らなかったら。もしかしてなし崩してしまったかも知れないが。
ディーノさんに相手が居るなら駄目だし、しかもそれがあのヒバリさんだなんて…

(ひぃぃぃ…、俺、殺されちゃうよ…!!!)

ざざざ…と、悪寒が身体を走るが。ディーノは一向に力を弱めようとしない。

「恭弥…、お願…いだから…」
「いやっ…その、まずいですって!!俺、ツナですよ?!離してください、ディーノさん〜〜!」
「や…、っだ。苦し…」

慌てふためいて綱吉が身体を起こそうとすると、ディーノは短くそう言って目の端から涙が零れる。
相当苦しいのか、その切なげな様子に、ドキン…と鼓動が跳ねた。
仕方ない…と、綱吉は唾を飲み込むとディーノの手を取って下の方へ持っていく。

「ディーノさん…俺、少しだけ手伝うから。頼むから、自分で楽にしてやって」

困ったようにそう言って、綱吉はディーノの手に自分の手を重ね。
寛げたズボンの中に入り込ませた。

「……っぁ…」

すでに熱く張り詰めたモノをディーノの手に握らせて中から引っ張り出すと、控え目な甘い声が漏れる。
…これは拷問だな…、とディーノの手越しに愛撫してやりながら、綱吉は顔を引きつらせた。
初めて聞くディーノの艶かしい声にどうしても中枢を刺激される。
対象になる相手だから尚更だったが、何とか自制心をフル稼働しつつ
(介抱してるだけなんだから!)と自分を押さえ込んでいた。

「は…、ぁっ…、恭弥……、きょ…ぅや…ぁ、っ」

(うっわ。ヤッバイ…)

どうしようもなく甘く呼ぶ名前に、自分のではなくても刺激されてしまう。
こんな風に呼ばれたら…、これはたまらないかも知れない…
ヒバリさんいいなぁ…、とか。今の所特定の相手がいない綱吉は、くだらない羨望を抱いてしまった。

そんな思考を振り払い、綱吉がとりあえずすっきりさせる事に努めたため、程なくしてディーノは達してくれた。
くた…と、力が抜けてようやく身体が離れる。
綱吉は、はー…と、息を吐いてベッドから離れた。何だか死ぬほど疲れた。

ティッシュで残滓を拭って終えた頃、ガチャ…と扉が開いて、ぎょっと振り返った。
(うわ、最悪…)と思ったタイミングで。その人が部屋に現れてしまった。
呼ぶにしてももうちょっと見計らって欲しかったなー…と。
恐らく連絡したのであろう、ディーノの部下を恨めしく思う。

「沢田綱吉…、事と次第によっては、咬み殺すけど」
「わー!!待ってくださいって!!」

怒りのまま激昂されるより、低く淡々と言われる方が怖い。
綱吉は慌ててベッドから飛びのいて、弁明する。

「俺は介抱しただけですよ!!悪意で薬を飲まされたみたいで…っ、
だいたい、今日はヒバリさんも呼んでたんだから、初めから居てくれれば…」
「……僕のせいにするつもり?」
「そ、それくらいは言わせてもらいます…!ずっとヒバリさんの名前、呼んでたんだから…!!」

未だ苦しげな吐息が納まらないディーノにちらりと視線をやって、綱吉は恨みがましげにそう言った。
その言葉に、無表情だった恭弥の顔が、苦しげに歪められた。
彼のそんな顔を見るのもまた、綱吉は初めてだ。
互いの思いに触れた気がして綱吉は、どき…とするが、すぐに頭を振った。

「とにかく、後は任せますからね!」
「誰がこんな事を?」
「それは今から洗い出しますけど、ヒバリさんには教えませんよ」
「…………」
「睨んでも駄目です!個人的に制裁されると困るんです。とにかくきっちりしときますから!」

それ以上何も言われる前に、綱吉は逃げるように部屋から出て行った。



「……さて、どうしてくれよう」

完全に綱吉の気配が消えた後、恭弥はベッドに近づいてディーノを見下ろした。
眼下の彼は、頬を上気させて苦しげに荒く息を吐いている。
薬とは恐らく媚薬の類なのだろう。簡単に整えられているが、乱れた衣服と寛げられたズボンに、状況は予想できる。
ついでに残っている独特の匂い。綱吉の様子を考えるに最後まではしてないだろうが…

恭弥は黒のジャケットを横の椅子に放り投げ、ネクタイを緩めながらベッドに座った。
色濃く艶の残る表情に、薬の効果はまだ切れていない事がわかる。
そっと頬に指を伸ばして触れると、びくん…と震えて瞳が薄く開けられた。

「きょー…や…」
「そうだよ、本物。…浮かされているとは言え、僕を間違えるなんて許せないね」

きちんと見ているのかも怪しい虚ろな瞳に、恭弥は目を細める。
これでは今の自分を認識しているのかも怪しい。

「こんな状態だと…、誰にでも足を開きそうだな、あなたは…」

忌々しげにそう言って固さの衰えていないディーノのモノを強く握ると、苦しげに眉が寄せられる。

「……っぁ、…や…、め…」

そのままぐりぐりと扱くと、快感を耐えるような悩ましげな表情を浮かべた。

「……本当に、許し難い…。こんな顔を僕以外に見せるなんて…」
「ぅっ…ぁ、ァッ…、やだ…」
「何が嫌なんだか。感じてるくせに」
「んっ!…ぁ―…っぁ、ア…ッ」

キツく上下に擦る動きは、愛撫などとは呼べないほど大雑把で荒かったが。
そんな痛みも快感に変わるのか、先端からは液が滲み出て。
ディーノは快感も顕わに嬌声を上げ、腰を浮かしていた。
開いた空間の隙に下着ごとズボンを取り去ると、屹立している自身が先走りで濡れていく。

「淫乱…、本当に薬の効果?気持ち良くしてくれるなら誰でも良いんじゃないの」
「や…、だ。恭…弥、きょうや…じゃないと…」
「嘘つき。他の奴をその名で呼んだくせに――…」

ソレの根元をぎり…握ると、喉奥から引き攣った悲鳴が聞こえた。
顔に苦渋が滲むが、構わずに恭弥は自身を出すと、解しもせずに無理やり捩じ込む。

「ひっ、ぁ…――っ!!あ、ぅぁァァ…ッ!!」

みしみしと音が聞こえそうな痛みと圧迫に、悲壮な声と共に相貌から涙が零れた。
締め付けに食いちぎられそうだ。恭弥は苦しげに息を吐くが、構わず押し込んでいく。

「くる…し…、痛…、きょう…やっ!」
「……あぁ、切れた…かな。滑りが良くなった…」

ぬる…とした感触が接合部に感じてそこに指をやると、前から流れた透明な液に赤いものが混じっていた。
恭弥は、く…と艶笑して。容赦なく進め易くなったソコに怒張した塊を突き入れていく。

「痛…、っく…ぅ…、苦し…っ…、止め…」

ディーノは頭を緩く振って止めどなく涙を流していた。しかし、握っていた前は固さを失ってはいない。
こんな苦痛でも快楽に変えてしまう薬の効果に、恭弥は舌打ちする。
自分じゃなく薬に喘がされているのだ。自分が飲ましたものならともかく、他人のと言うのが面白くない。

「…目を、開きなよ、ディーノ。あなたを抱いているのは誰だい?」

全てを納めて身体を密着させ、恭弥がそう囁くと。ディーノは濡れた瞳を僅かに上げた。

「…きょ…や…、…」
「そうだよ…、僕。しっかり覚え直して貰わないとね…この、指と…」

握っているだけだったモノの指を絡めて、先走りと共に握りこんで扱く。

「ぁっ…、ぁ…ぅ……、く…」
「僕の触り方…、覚えてよ?ねぇ…ディーノ…、僕の声と…」

ことさらにはっきり名前を呼んで、扱きながら耳奥に声を吹き入れる。
びくびくと引きつく腰に、キツいだけだった内部が蕩け始めていた。

「僕の気配と…、中の…。好きでしょう?…、僕のこれ」

ぐちぐちと存在を確めさせるように腰を押し付けると、びくん…と、ディーノの身体が震える。

「う…ぁ…、ァッ…、す…き……、恭弥…の…」

甘く喘ぐ声にもはや苦痛はなく、快感を露わに嬌声を上げた。
感じ入って閉じそうになる度に「駄目、僕を見て」と、瞼を上げさせ自分を認識させる。

「ふ…、ぁっ…恭弥…、ぁっ…、きょ…や…」
「そうだよ…、僕でしょう?…覚えておきなよ…全身で。頭が溶けててもわかるくらい…」

潤んだ瞳でじっと見上げるディーノに、満足そうに微笑むと、恭弥は緩慢だった動きを激しく抽挿しはじめる。

「はっ…ぅ…ぁっ、ぁっ!!…きょぅ…っや…ッ…」
「…僕以外に、こんな事…許すんじゃないよ…?本当に…」
「ぁっ…ぅ、…ん…、ごめ…ん…、きょう…や…」
「―――…僕を…呼び続けてた事に免じて、今回は見逃すけど…次は殺すからね…」

低くそう呟いて、恭弥はぐぐぐ…と、最奥に身体を突き入れて、何度も身体を揺さぶり続ける。
快楽に喘ぐディーノの声は次第に擦れたものになって行ったが。
緩く開けられた瞼が閉じる事はなかった。





翌朝、ディーノは覚醒したにも関わらず、暫くベッドで目を閉じたままでいた。
ずーーー…ん、とたっぷり自己嫌悪に陥っていたのだ。
いっそ覚えていなければ良かったのだが。
何となく綱吉の気配と、それから続く恭弥の激しいsexが頭に残っている。
その記憶の断片を繋ぎ合わせて判明する事実に、頬が引き攣ってしまう。

「……起きてるんでしょ?」

小さく息をつくと、唐突に頭上から声がかかった。
気配を感じなかったからてっきり誰も居ないと思ってたのに。少し離れた場所で座っていたらしい。
恭弥はベッドの端に座るとディーノの髪を撫でてきた。
意外なほど優しい手つきに、寝たふりでもしようかと思っていたディーノの瞳が開けられる。

「恭弥…」
「覚えてる?」
「……う…、何となく…は」

単的な言葉に気まずそうに目を細めて、ディーノは頷いた。
恭弥はそれに、はー…、と長く息を吐く。

「次はないからね。迂闊にも与薬された事も含めて」

触れる手つきは優しいのに、言葉は低く恭弥が怒っている事を現していた。
迂闊だったのは間違いない事だったのでそれに反論も出来ず。
ディーノは「……ごめん…」と小さくなって謝る。

「……、素直だね」

てっきり酷いsexについて、文句でも言われるかと思ったが。
すんなり謝罪した事に拍子抜けしたように目を瞬かせた。

「迂闊だったのは確かだし。…お前も、傷つけた…し」
「―――――」

身体に残る鈍痛は、今も起きれないくらいキツいものだったけど。
荒々しいsexの中で聞いた恭弥の声を覚えていたから。そこから気持ちを感じ取れたから。
ディーノはしゅん…と、しょげたような表情をする。
恭弥は僅かに目を張ってディーノを見るが。否定はせず、認めるように溜息をついた。

「……そうだね、二度目はないと思って。でないと、誰であっても咬み殺してしまいそうだから」

あなた自身を含めて。
続けられた言葉がやけに低くて。ディーノは背筋が凍るような感覚を覚えた。
それだけ思われている事を嬉しい…なんて思っている場合じゃない。
大いに反省して、絶対に次はない…と、固く心に誓ったのであった。


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2008.03.16


地下第1弾がこれとか(笑)でも、このネタのせいで地下ができる事になったという。
自分的には第三者が混じるってのは、普通じゃないので(笑)
苦手な人は読んでないと思いますが。こんな感じのはっちゃけた物が地下室行きになります。
コスプレとかね!(爆)本当はパラレルもこっちかと思ったけど、あれはエロだけじゃないんで…(笑)
以下、余談です(笑)



(余談)

「……もうこんな事が起こらないように、慣らす必要があるかな」
「どういう事だ?」
「薬。…あなた酒は強いけど、こういうのには慣れてないよね、マフィアのくせに」
「うちは薬には手を出さないからな、あれは人格を無視する嫌な物だし」
「だから…、頻繁に使って慣らさせてあげようか。媚薬とか」
「ば…っ、…冗談じゃねぇ…!!」
「別に、僕が飲ませる分には良いんだよ。僕はね」
「オレが勘弁して欲しい…」
「慣れれば、我をなくして誰かを僕と勘違いして誘ったりしなくなるでしょ」
「……本当に、悪かったって…。もう絶対間違えないから」

(どうだか…)

心底反省したように言うディーノに、恭弥は視線を逸らして嘆息する。
意外に快楽に弱い事を知っているから、前後不能になったらどうだか知れない。
だから、その前後不能になるような事がないように。
恭弥はこれからいろいろ仕込んでおかないとな、と思っていた。
本当に僕以外には、反応しなくなるように。