それから、何時間経っただろうか。
夕日で照らされていた外は既に真っ暗で、応接室内は月の光が差し込むだけだ。
しかし暗闇に慣れた目は、自分の下で悶える姿をしっかりと捕らえている。
最初は苦痛の悲鳴と、苦しげな表情を浮かべていたディーノは。
今はもう、過ぎる快楽に喘ぐしか出来なくなっている。
すでに拘束を外された手は力なくソファに投げ出されていて、身体を押す事もできないようだ。
「んっぁ、ぁぁ…っふ…、もう…ヤ…っだ…、や…ぁっ」
嬌声混じりに制止をかけても、一層煽るだけだ。
恭弥はもう何度目かもわからない行為を、壊れた玩具のように繰り返し繰り返し続けていた。
ディーノの腹や下肢、ソファに至るまでお互いの白濁がべっとりとこびり付いている。
揺さぶる度に淫らな液音が響き、快感を増長させていた。
律動を続けて恭弥の額からも膨大な汗が流れ、息は荒く肩が動いている。
疲労さえ覚えているのに。壮絶な快感と熱に突き動かされて止める事ができない。
眼下に見える涙も流し尽くしたぐちゃぐちゃに乱れた顔を見るたび、押さえられない何かが突き上がり。
埋め込んだ灼熱のモノを夢中で動かしてしまう。
「ひぁ…、ぅ…ぁァッ…、っん…ぁぁっ!!ぅ…」
「止められ…ない、…壊れ、そ…う…」
幾度達しても持続する快感に脳が溶けていくようだった。
激しく突き上げて身悶える身体と共に、己の脳も破壊されそうだった。
もう、理由も何も忘れてしまっていた。
全てを凌駕し、超える快感をただ追い求めて。何度も何度も、単調に身体を揺さぶる。
「ぁっ、ぁっ…ァ、ふぁ…、は…、ぅっん…ァぁ…」
「溶けてしまえ…、壊れて、しまえ…、馬鹿みたい、に…感じて…、…ねぇ…、僕を――…」
“呼んで…、ディーノ…”グイ…と身体を倒し耳元で囁けば。
締め付ける力も失せてただ挿入を甘受するだけだった後ろがキュ…と絡み付いてきた。
何を言ってるかも良くわからなかったが、ぼやけた思考が言葉を紡いでいた。
擦れた声で恭弥が呟いた瞬間、力なくぜいぜいと喘いでいたディーノの瞳が開かれて、苦しげな表情がふいに和らいだ。
「…きょう…や、恭弥…、…恭弥…好き、…きょ…ぉ…や…っぁ…」
狂ったように何度も呼ぶ声に、まだ何処に残っていたのかと思う程の快感が体内から溢れだしてきた。
…いや…、快感…じゃ、ないのかも知れない。もう、よくわからない。
魂までも震えるような甘い悦びが満ちていく。
たまらない…、身体の快感以上に、心がイってしまいそうだ…。
「恭弥…、っぁ…、恭…や…っぁっ、ぅ…ぁ、ぁ…ふっ、ァッ…」
「……っぅ…、ぁ…、…もう…、駄目だ…欲しくて、たまらない…、もっと…」
痺れる腰を夢中で突き上げ、熱い熱を貪って行く。
もう何でも構わない。これが情愛だと言うのなら受け入れよう。
あなたが欲しい。あなただけが…、どれだけ昇り詰めても、もっと、もっともっと。
僕に頂戴、身体も心も声も全てを。その為ならばいくらでも。
「…ディーノ…、好き…だよ…」
「―――――っ…ぁ…」
肌が擦れ合う激しい音の中、擦れた声が漏れた時。
ディーノの目が見開いて。乾いていた涙が一気に溢れ出した。
力の入らない腕を懸命に上げ、覆い被さる身体をしっかりと抱き締めていた。
「ぁぁ…、っぁ…恭弥…、きょうやっ…すき、ホント…に好き、恭弥…っ!」
「…っく…、また…イ…く、あなたも…」
「っ…ぅん…一緒に…、イ…って…恭弥…、っぅぁ、ぁぁ―…ッ!!!」
ビクビクと一層大きく痙攣して、辺りに響く高い嬌声を聞きながら。
二人は、ほぼ同時に薄くなった熱を吐き出していた。
どさり…とようやく動きを止めて共にソファに沈み。
疲労と溢れすぎた快感に、気を失うかのように同時に眠りに落ちた。
真っ暗だった外は、夜明けを迎えようとしていた。
戻る