こんな事まで教える事になるとは思わなかったけどな…
ディーノは嘆息しつつ、ベッドサイドの机の中をごそごそ探して目的の物を取り出した。
プラスティックの丸いケースを見て、恭弥は首を傾げる。
「何?」
「…軟膏。今はこんなもんしかねぇが、無いよりマシだろ」
「……………」
「……慣らすのに使うんだよ…、お前…本当に知ってんだろうなぁ…?」
なお不思議そうに見ていた恭弥に、がっくりとしてディーノは具体的に言う。
本気でsexの教師になれってか?教えながらやるとか、冗談じゃないぞ。
恐ろしい想像を頭を振って散らし、ケースを手渡した。
ようやく理解したらしい恭弥は、蓋を開けてクリーム状のものを指にとる。
「面倒なんだね、オトコって」
「お、お前なぁー…、やられる身にもなれっつーの」
煩わしそうに言ってクリームを見つめる恭弥に、気を削がれそうになりつつディーノはベッドに横たわった。
ガウンしか着てなかったため、脱ぐ必要はないだろう。
足の間に入り込む恭弥を下目で見て一抹の不安が残るが、互いに初めてなんだから仕方ないと腹をくくる。
「…やられる方になってくれるとは、思わなかった」
後ろに手を伸ばしながら恭弥は言った。
返答を期待していないのか、手は止めずに軟膏を塗りだす。
ぬめる感触が気持ち悪い…
ディーノは目を閉じ、不快感に耐えつつ恭弥の言葉に答える。
「…お前がどっちでもいーなら、オレが抱いてやるが、そうじゃないだろ?」
「……やられるのは、ごめんだけど」
「だろーな。恭弥が発散しねーと意味がねぇだろ。先生が甘やかしてやってんだよ」
「先生…、ね」
つまらなそうに恭弥は呟いて、唐突に指先を挿入した。
クリームのおかげか意外にすんなり入り、ずぶずぶとそのまま侵入させる。
「……っぅ…」
痛みは感じないとは言え、壮絶な異物感にディーノはうめいた。
想像以上に気持ち悪くて眉を寄せ、歯を食いしばる。
「…ワォ。…イイ顔、楽しくなってきたよ」
「こ…の、やろ…」
真性サディストめ…!罵ろうと開いた唇は、ぐり…、と回される指に再び閉ざされた。
舌なめずりでもしそうな声色に薄目で睨むのが精一杯だ。
苦しそうな表情を眼下に、恭弥は自然と口端をつり上げる。言葉通り、愉悦を感じているのだ。
(ホントに、早まったかも…なぁ…)
ディーノがそう思った所で、もう止める事はできないだろう。
今度止めたら本当に殺されるだろうし。
「……っは…ぁ、…も…、いいから、それ止め…ろ」
「どうして?慣らせって言ったのはあなただよ?」
指を増やして、暫くの間ぐにぐにと掻きまわす感触が耐えられなくて、恭弥の腕を押さえた。
「もう、大丈夫だと、思う…」
本当は頃合なんて知らなかったが。
この感触が長引くくらいなら、痛い方が我慢できそうだったから、腕を引いて促した。
手が引かれ覆い被さるように密着して、恭弥のモノが下部に触れる。
触れた先端がすでに硬くなっていて、熱い感触に腰が引ける。思わず身体を押して制してしまった。
「ちょ…っ、…待て」
「―――この期に及んで…」
「ちっ、違う違う…!あー…、お前のにも、付けなきゃ…」
ぎろ…と、睨まれるのに慌てて言い訳し、手探りでケースを手繰り寄せた。
一応納得したのか恭弥は息をついて様子を見ている。
思いつきだったが、やっといて間違いはないな…と思い、軟膏を取り逆手で恭弥のに触れた。
ぴく…、と恭弥の肩が揺れる。構わずに上下に動かしてクリームを塗りつけると、熱っぽい吐息が漏れた。
途端、ぐい…とディーノの肩が押され、ベッドに縫い付けられる。
「…………」
見上げた恭弥の瞳は欲に濡れていて、興奮してんだな…と、ディーノが目を細めた時。
みし…、と身体の奥が軋む音を聞いた気がした。
「いっ!…くっ…ぁ、ああっ…ァッ…!」
「……ん…っ」
信じられないほどの圧迫が内部を掻き分けてくる。
抑えきれずに苦渋の声を上げ、ディーノは首を仰け反らせた。
あまりの苦しさにシーツを固く握り締める。
甘く見ていたかも知れない。こんなにキツイ…、ものとは…
「……ぅ…ぁ…、…きょ…っや、ちょぃ…、待ち…」
「…っ、もう、待て…るわけなぃ…でしょ!」
押し入るモノを一旦でも止めたくて身体を押そうとしたが、手を捕まれ阻まれた。
息を吐きながら言う恭弥の声は、明らかな欲情を現している。
そんな状態で止められないのはわかる。わかるが、慮ってやる余裕もない。
ディーノはそれでも、必死に浅く呼吸を繰り返し、何とか身体の力を抜き始めた。
それに呼応して徐々に侵入が深くなる。クリームのおかげか、裂けたような感じは無いのが幸いだ。
「…きつい…んだけど…っ」
「仕方…ない…、だろ」
ゆっくりと何とか全て納め、身体を止めた恭弥は苦しげに呟いた。
自分も相当苦しいが、それだけ締められている恭弥も痛いだろう。
まだ強引に突いて来ないだけ我慢してるんだろうか。ただ、窮屈すぎて動けないだけか。
何を思ったか、荒く呼吸をしていた恭弥は、すっかり力を無くしていたディーノのモノに触れた。
過敏になっていた身体は、びく…っ、と大きく震える。
制止する間もなく上下に扱かれて、ディーノはぎゅ…と目を閉じた。
「……ぁっ…、く…っ」
直接な性器への刺激はどんな状況でも快感を生むらしい。
苦しさと快感と痛みと…交じり合う感覚に、眩暈がする。
苦痛を長く感じると、人間は次第にそれに麻痺し順応していくと聞いた事があるが…
前からの快感の所為かは知らないが、苦しみが薄れて行くのを確かに感じていた。
弛緩し始めた身体に、恭弥は扱く手はそのままに身体を動かし、抽挿を始めた。
「……っぅあ、きょぅ…や…っ、止っめ…」
「…止めないって、言ったでしょう…あなた」
ぼうっとしていた所へ強烈な刺激が襲い掛かる。
もう、気持ち良いのか苦しいのか、さっぱりわからないけれど。
恭弥が、眉を寄せ息を荒げているのを見て。確かに感じているのを見て。
自分も快感が上るのを感じていた。
「……、…っ」
切羽詰まったように息を詰まらせた恭弥に、達しようとしているのを感じ取る。
ディーノは必死に恭弥の手の動きに集中して、高みを合わせようとした。
「……は…っ…、っく…」
暫くして、恭弥は短くうめき、ぶる…と、身体を震わせた。
自分に倒れこんでくるのを、ディーノは引き込んで抱き締める。
「……んっぁ…、ぅっ…ぁ…」
熱い液を体内に感じながら、握りこまれた自身が射精するのを、朦朧と感じていた。
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