9:『永遠』
窓から差し込んだ朝日で、恭弥は目を覚ました。
隣に眠る青年は光に慣れているのか、それもとも鈍感なのかわからなかったが。
少しだけ瞼を動かしただけで、起きる様子はない。
恭弥は静かに身体を起こし、その寝顔を見下ろした。
恐らくは疲れきっていて、眠りが深いのだろうが。
陽光に照らされた顔に翳りは見られず、暖かい光に心地良さそうだ。
金色の髪が光に反射して煌いていて。恭弥は眩しそうに目を細め、視線を逸らした。
そっと、起こさないようにベッドから抜け出し、窓のカーテンを閉める。
日光をレースのカーテンで和らげると、明るさに落ち着きが戻り、恭弥は軽く息をついた。
明るい太陽の光は、あなたによほど似合うと思うけれど。
(少し、眩しすぎる。)
焼きついた残像を消すように、ぎゅ…と目を閉じて。
恭弥はベッドから離れたテーブルに向かう。
何気なく、置いてあった果物の篭に顔を向けたら。
その中に添えられているものに、視線が止まった。
今まで、思った事はあったけれど。それを手に取った事はなかった。
でも何故か…今は、引き寄せられるように、その果物ナイフに手を延ばしていた。
さっき。あんなものを見たせいかも知れない。
輝く金の光に、常に見るあなたを連想してしまったから。
裏の世界に生きるマフィアのボスのくせに、いつも光の中心に居るような人。
闇を知っているはずなのに。自分とは正反対の、その姿に。
苛々して。むかむかして。
そして、どうしようもなく……、焦がれる。
手に持ったナイフを抜いて、相変わらず深く眠っている、ディーノの元に歩く。
ベッドの横に立って、無防備な寝姿を見下ろした。
これを振りかざし、切り刻んで血を浴びせれば。
あなたの光はくすむだろうか。
そうしたら…僕の所まで、堕ちてきて。
永遠に、僕のものになるだろうか。
殺気を感じさせたらすぐに起きるだろうから。
このまま気配を殺して、一気に――――……
ぼんやりとそう考えた所で、恭弥は瞼を伏せてナイフを下ろした。
口元には自嘲気味な笑みが刻まれている。
確かに、そうすれば。あなたは僕のモノになるかも知れないが。
僕の望むあなたじゃないのに、手に入れて何の意味があるというのか。
わかっているからこそ。今までだって実行しなかったし、できなかったんじゃないか。
小さく息をついて、瞳を開けて。どきり…と、鼓動が跳ねた。
深く眠っていると思っていたあなたの瞳が、こちらを見ていたからだ。
「なんだ、やらないのか」
そんな憎らしい事を言って、ディーノは身体を起こして笑みを浮かべた。
自分を見つめる笑顔に、恭弥は目を細め、口を引き結んで。
あぁ…、光なんてなくても同じ事だ、と心中で溜息をついた。
あなたはきっと、真の暗闇の中でもその強い光を絶やさない。
たとえ、自分の…、他人の血で全身を塗れさせたとしても。
あなたはあなたで、在り続けるのだろう。
(だからこそ、堕としめたいと、思うのだけれど)
それは永遠に叶わないかも知れないと、思う。
ディーノは、ナイフを握ったままの腕を引いて、自らに引き寄せた。
恭弥は咄嗟に、触れてしまう危険を感じてナイフを床に落とす。
響く金属音に驚いてディーノは瞬きをするが、すぐに笑みに変えて、恭弥を抱き寄せた。
そして近づく顔と唇を。恭弥は、眩しそうに見つめていた。
確かに堕とす事はできないのかも知れない。
けれど。
口内に侵入してくる舌を絡めて強く吸うと。
少しだけ自分の望む姿に近づいた気がした。
薄目で表情を見ながら、口端に笑みが浮かぶ。
たとえ、堕とす事ができなくても、あなたが自ら堕ちて来ればいい。
そう仕向ける事は、そんなに難しい事じゃないかも知れないと。
恭弥は口付けを深くして、強く抱き締めた。
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最後まで8のお題とどっちにしようか悩んで、とりあえず書いてみたネタ(笑)
あんまり区別がつかないんですよね、これくらいのネタ…あぁ、貧困な妄想回路め…
うちの二人のスタンスは。恭弥からでっかい重い→1個と。←←←←←な感じのディーノからの小刻みな矢印です(どんな)
しかし、私的にこんなに矢印のあるCPが今まであっただろうか。いや、ない!(反語)
おかげで創作に行き詰まっちゃうよ〜ラブ過ぎて困っちゃうよ〜(意味不明)
しかし恭弥ほどの執着がディーノにはなさそうなので。そこらへんでぐちゃぐちゃしそうです。ふふ(何)
つか、恭弥…、ディーノに変な妄執を抱いているな…おかしな程に…(爆)