1:貪欲なキス


もう何分くらいこうしているんだろう。酸欠気味な脳は、時間間隔を狂わせる。
貪るように絡める舌に自らも合わせ、唾液を混じらせて。
長いキスはいつ途切れるとも知れなかった。

「……んっ…、は…、ぁ」

角度を変えた隙間から酸素を補給して、鼻腔から吐息が漏れた。
舌先を尖らせて上顎をつつき、そのまま歯列をなぞって、再び舌を絡ませてくる。
緩急をつけて生まれる快感に、上手くなったもんだ…とぼんやり思っていた。

年齢的に仕方ないとはいえ、恭弥はまだ経験が少なくて。
最初の頃のキスなんて、ただ合わせて舌を差し入れるだけのものだった。
sexをした事はあるらしいが、深いキスをするような仲ではなかったのかも知れない。

無造作に入り込む舌を絡め取って、快感を覚えさせたのは他ならぬ自分だ。
何度目かで自主的にやり方を追うようになり、今ではすっかり習得したようだ。
自分がいいと思う事を教えたのだから、気持ち良くないわけがない。

「んん…っ、…ん…」

深く唇を合わし、吸った舌を甘噛みされると、ぞくり…とした感覚が背筋を抜けた。
恭弥が合わせるだけじゃなくなった頃から、翻弄されるのは自分の方になってきているが。
それを癪だと思った事はない。そのように仕向けているのも、自分だからだ。

(主導権渡さないと、機嫌悪いからなー…)

余裕がないわけじゃない。ひっくり返そうと思えば、まだ出来る。
ただ…向けられる恭弥の思いが心地良かったから、したいようにさせていた。

しかしさすがに、執拗過ぎるキスに苦しくなってきた。
そろそろ引き剥がそうかと、閉じていた瞳を薄く開けた時。
どき…、と鼓動が跳ねる。

同じように閉じていると思っていた瞳に、じ…っと、凝視されていて。
黒い瞳に吸い込まれそうで、身体が強張る。

「…っん…、…恭…や」

身動ぎして顔をずらすと、無理には追ってこなかった。
ぺろ…と、最後に唇を舐めて離れる。

「お前な…、目くらい閉じろ」
「―――どうして?」

不思議そうに言う恭弥に、ディーノは言葉を詰まらせた。
(どうして…って…)改めて問われると、明確な答えを言えない。
数呼吸、思案するように眉を寄せるが「そーいうもんだからだよ」としか答えられなかった。

「そんなんじゃ聞かないよ」

曖昧な理由を鼻で笑い、自らの唇を舐めると。
視線を合わせたまま、再び顔を近づけてくる。

見られている…と、思うと。鼓動が更に早くなる気がした。

本当に余裕がなくなるのも時間の問題かもしれない。


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2007.10.18

ちっと短いですね、キスだけでそんなに引っ張れなかった…(笑)
こーゆう続きは初めてですが、一連の動作でお題ができているのでいけそうかなっと。
後半は裏ばっかだろうなぁ。うん(笑)