「いつもとは違う種類の黄色い声が聞こえそうだねぇ……」
昼間なので閑散としている酒場でレオナの声が響いた。
人が少ないのは助かったが、話を聞く為には彼女には当然説明する必要があって……
恥を飲んで経緯を話していた。
「からかうなよ…」
キセルをふか〜とふかしながら微苦笑して言うレオナにげんなりした声で返答する。
落ち着いた口調と子供特有の高い声のギャップが妙に可愛らしい。
そんな様子を見ているとどうにも母性本能がくすぐられてしょうがないのだが、それを言うとまた怒るだろうと思い、レオナは口を噤んだ。
「……で、アンタの昨夜の行動を説明すればいいわけね?」
さっさと本題に入ってくれる彼女にほ…と、息を付いてあぁ、と頷く。
「そうさねぇ……アンタが居たのは知ってたけど、あたしは遠くから見ていただけだしねぇ…」
レオナは、ん〜…とこめかみを軽く押さえ、カウンターの中から見ていた昨夜の光景を思い出していた。
しかしカウンターで座っていたならともかく、離れたテーブルまで細かく見ていられるわけもなく。
「1人だったけど、普通に飲んで、普通に帰って行ったと思ったけどねぇ……」
あまり有力じゃない情報にがくり…と項垂れた。
……あぁ、でも…
あからさまにがっかりした俺を見て慌てて言い足す
「シエラなら知ってるかも知れないよ?」
「……シエラ?」
意外な名前が出てくる事に不思議そうに聞き返した。
「そう、ちょっとだけどアンタと話してた気がするねぇ…」
「覚えてないな……」
「記憶が無いんだから当り前だろ」
呟く俺に横からすぐさま冷たい突っ込みが入る。
…んな事はわかってるんだよ……
俺は見上げ、べ〜…と舌を出して睨んだ。
ルックは一瞬、ぽかんとした顔をした後…耐え切れずに吹きだして笑った。
―――いかん、思考まで子供化してどうする……
レオナにまで控えめに笑われて、俺は穴にでも入りたい気分だった。
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