というわけで、次はシエラを探して城の中を歩いていた。全く忙しい事だ。
せっかくの休みだったのに……
俺はわけのわからない事態で潰れてしまった休暇を思い、はぁ…と息をついた。
その拍子にルックに引かれていた手を握ってしまったらしい。
「……どうしたの?」
何か用があるのかと思ったのか、ルックは足を止めて振り返った。
実に笑える事に、対応が小さい子へのそれになっている。
案外、良いお兄さんが出来るのかもな…意外な面を見て思わず笑みが漏れる。
ルックは満面に浮かんだ子供の笑顔に毒気を抜かれつつ、それ以上何も言わないフリックに溜息をついて再び歩き出した。
「何処に向かってるんだ?」
「クラウスの所」
「……成る程」
スタスタと歩いて向かう目的地を聞いて俺は納得する。
確かに彼女はクラウスの所に居る事がある。例に漏れず今日も居て欲しいものだが。
これ以上この情けない姿で歩き回りたくないからな……
しかしそんな切なる願いも聞き届けられず、赴いたクラウスの部屋にシエラは居なかった。
それどころか―――
「彼女に何用があるんだ?」
戸口から聞こえる声はまさしく我が軍の正軍師様のもので…
俺は部屋の中に入る事が出来ず咄嗟に影に隠れていた。
「アンタに言う必要はないよ……居ないなら良いんだ」
「……何事か起こっているのではないのか?お前が動く程の事が。それに……」
シュウはそこで一旦区切り、入室せず戸の所で立っているルックの背後に目をやる。
「その子供は何だ?」
存在を言い当てられぎくり、と息を飲んだ。
どうやら姿を見られていたらしい。顔までは確認されなかったようだが……
きつく問う口調と近寄る足音に俺は焦ってわたわたする。
「それこそ関係ないね」
ルックは素気なくそう言うと、シュウの視線から隠すように俺の身体をふわり、と身体を抱き締める。
その瞬間に魔力の気配に包まれた。
転移魔法だ……と認識した時にはすでに、辺りの景色は歪み始めていた。
Next →→→
|