大きな栗の木の下で

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食事をすっかりたいらげて俺はトレイを机に戻した。
「お前は食べて来たのか?」
今更の質問だなと思いつつも聞いてみる。案の定、肯定の頷きが返された。
本当ならご飯も食べて子供の身体では眠くなる所なんだろうが、先ほどまでぐっすり寝ていた為か目は冴えていた。
さて、これからどうするかな……
落ち着いて考えなければならない。ずっとこのままで居るわけにも行かないからだ。
取りあえず、シエラに会ってみるべきだろうな…と、結局どうにも出来ない事に小さく溜息を漏らす。
「……不安?」
俺の心情を読みるようにルックが覗き込んできた。そこには揶揄る響きは無い。
何とか苦笑いの表情を作って(はたから見ると出来てないが)かぶりを振る。
「困ったなとは思ってるけどな…多分、どうにかなるだろうとも思ってる」
「へぇ……意外と、楽天的なんだね」
ルックは意外なほど気楽な言葉に、ひょい、と器用に片眉を上げて首を傾げた。
不思議そうに見つめる瞳ににっこりと笑いかける。
「初めは途方にもくれたが……お前と駆けずり回ってたら何だか別に構わないかな…って」
「構わないって?」
曖昧に言う俺に畳み掛けるように聞いてくる。
「もしこのまま戻らなくても、いいかな…って。そう思ったら、気も楽になったかな」
「どうして戻らなくても良いの?」
ベッドに腰掛けている俺に、床に片膝をついたルックが見上げる。
怪訝そうに見つめてくる翠の瞳に俺は
「……もしもの時は、だ…そりゃ…戻った方が良い方に決まってる」
と苦笑した。
「僕が優しいから……?」
ルックは俺の頬に手をあてて静かに囁くような声で聞く。思い当るふしに、どきり…と胸が動く。
「それは…確かに思ったが…」
自覚していなかったのかどうなのか……言われてみてそうなのかも知れないと思った。
普段と違うやけに優しいルックの態度に…居心地が良いと、無意識に思っていたのかも知れない。
「……不謹慎だな、俺は……」
苦笑してぽつりと呟く。
「お前が頑張って原因を突き止めようとしてくれてるのに……こんな風に思うなんて」
「本当にね」
申し訳なさそうに言う俺にきっぱりとルックが叩き付けるように言った。
機嫌を損ねたかな……?と思い見る表情は、とても穏やかなもので――
「何で僕が戻そうとしてるか、わかってるの?」
「……え?な、何でだ?」
それでも言葉だけは咎めるようなもの。わからない俺に珍しい、苦笑いを見せる。
返事はなく、そのまま顔を近づけられ唇を掠めるようなキス。
子供特有の柔らかい感触を味わうようにそのまま何度も啄ばまれ、息が苦しくなる。
腕を軽く掴まれているだけだったが、優しいキスに身体は動かずそれを甘んじて受けていた。
「……んん…ル……ック」
小さな舌を絡められて、鼻腔から抜ける息が熱くなっていく。
「だって、このままじゃ出来ないじゃない」
キスの合間に先の返事であろう言葉が聞こえる。言われた言葉の意味を反芻して、かぁ…と顔の温度が上昇した。
「で、出来ないって……」
「無理でしょ?こんな風じゃ、さぁ……?」
ルックは言葉を示すように手を下げて素早くズボンの中へと滑り込ませると、
小さくともちゃんと男の形を持っているソレに触れる。
「……っ!?」
直に触る手の温度にびくん、と身体が跳ねた。
そんな幼い頃に触れられた覚えもなく、慣れていない身体の感覚に戸惑いを覚える。
「へぇ……こんなんでも感じるんだ……?」
明らかに反応した俺に興味津々といった様子で、片手で足りてしまう可愛らしい象徴をやわやわと指先で揉む。
「……ぁっ、ヤ、やだ……触る…な…ぁ」
ソレ自身に顕著な変化があるわけじゃない。精通もまだな為、先から液を溢れさせる事も無かったが――
俺は知っていた。身体が覚えていた……どうされれば快感が起こるのかを。
そしてルックの手つきはいつもの行為を如実に再現していて……
「……ふ……や、ぁ…ん……ひぁ…う」
幼い身体の奥から来る衝動に、常ならば押さえられる声も到底止められず、1オクターブは高い嬌声が辺りに響く。
ベッドに腰掛けた状態で上体だけ倒されて、床に膝をついているルックの眼前にぴくぴくと、震えるモノを取り出され晒された。
ちゅる…と、その口内に吸い込まれて、湿った感触が伝わってくる。
「…ぁっ…ひゃ……ぁん…ん、ん…」
ぴちゃぴちゃと聞こえてくる音にどうしてもされている光景を思い浮かべてしまう。
どうにも耐える事も出来なくて無意識に押し上げるように腰を浮かせてしまっていた。
「……ん…くぅ……ふっ…あ、ぁぁ…っ!!」
身体の変化がついて行かないままに快感だけが先走り…呆気なく昇りつめる感覚に襲われる。
情液を吐き出す事もない身体だったが、イク…という記憶のみで達してしまっていた。
喉に張り付かせたような一際甲高い声と、びく…びくん…と小刻みに震える身体でそれが訪れた事をルックは知った。
はぁはぁと荒く熱い息をついて、ぐったりと感じ入ってる。
微かに開いた唇から覗く小さな赤い舌や、潤んだ瞳は……どうにも情欲をそそって仕方がない。
ルックは渇いた唇を舌で拭って湿らせる。同時に沸いた唾が喉を通り過ぎていった。

 

 

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