いつものように来日して、いつものように綱吉のうちに遊びに来た時の事だった。
すでに顔なじみのママンに「上がっていいわよ!」と言われ、綱吉の部屋の前に移動する。
ドアをノックしようとした瞬間。
「えぇーー!!!そんなの無理だって!!」
良く聞く、綱吉の叫びが耳に飛び込んで来たのである。
「情けない事言ってんじゃねーぞ、ツナ。男なら当たって砕けろ」
「砕けたくないから悩んでんだろー!?」
「なんだなんだ、騒がしいな!」
想像通り中に入った瞬間、小さな足が綱吉の顎にヒットしているのが見えた。
ディーノはそれに動じる事も無く慣れた様子で中に入る。
ぎゃ!と悲鳴を上げて顎を押さえていた綱吉が入室した人物に、ぱっと顔を上げた。
「ディーノさん!」
「よお!久しぶりだな!ツナ」
そう言ってにこにこと手を上げる様子に、綱吉はほわー…と顔が緩む。
ボスとか立場とか関係なしに、ディーノの人柄に安心できるのだ。
もしかするとリボーンを共に家庭教師とした事で同じ苦労を味わっているからかも知れない。
「んで?何で叫んでたんだ?」
ディーノは、ちゃおっスと挨拶するリボーンに軽く手を上げてから綱吉の前に座る。
ベッドに座っていた綱吉は自然と見下ろす視線になり、困ったように片眉を下げた。
どうやら言い難い事なのか口を開こうとして逡巡している。
別に無理に言わなくても…とディーノが言いかけた時「恋の悩みだ」とリボーンが口を挟んできた。
「へぇー、ツナもそーいう年頃か!…っておかしくはないよな思春期だもんな!で?どっちの子だ?良く居る女の子二人のどっちかなんだろ?」
「へ?は…、いいい…いえ…、その!」
リボーンの一言でぱぁぁぁ、と嬉しそうに顔を明るくさせたディーノが止める間もなく詰め寄ってきて。
綱吉は、はわわわわ…とたじろぎ肩を押される格好になってベッドに倒れこんだ。
結果的に押し倒すような形になり、ディーノは慌てて「わりぃ!」と退こうとすると。
「ちょうどいい、お前が教えてやれ」
と言いながらリボーンはディーノの後頭部に蹴りをかました。
「んぎゃ!…な、何すんだーいきなりー!」
体勢を崩して綱吉の上に倒れこんだディーノは身体を起こそうとするも、背中にリボーンが乗っていて動けない。
軽いはずなのになんだか起きられないつぼの部分に体重をかけられているようで。
二人分の重さを受けている綱吉は「ふぎゃ」と潰れた声を出している。
「ディーノは男の経験もあるからな、ご教授してもらえ、ツナ」
「ななななな、何言ってんのー!!!んな馬鹿な事!!」
「……はー?何の話だ?」
ようやく退いたリボーンは二人が寝転んでいる隣に、ひょい…っと降りる。
ディーノが身体を横にずらして身体の隣に肘を付くと、重さから開放されて綱吉はほっと息を吐いた。
「ツナの相手は女じゃなくて男なんだ」
「へ?…あー…、まっそー言う事もあるよな!」
「……そんな簡単に納得して良いんですかディーノさん」
「マフィアの間はなー幅広い付き合いが必要なんだぞー?」
結構なカミングアウトだと思うのに、けら…と笑いながら聞いているディーノに綱吉は軽く眩暈を覚える。
こういう拘りのない所は嫌いじゃないが、ここまでとも思わなかった…。
それともマフィア間って、本当にこれが普通なんだろうか。
比較的自分と感性は合うと思うが、リボーンに育てられたディーノは今ではすっかり感化されている感じがする。
昔のディーノさんが一番気が合いそうだなぁ…とか思いつつ。
脱線しそうになった思考がまたもリボーンの言葉で引き戻された。
「男相手のやり方がわかんねーって言うから、とりあえず押し倒せばいーんだって言ったんだが」
「あー、それで最初の叫びか」
「そうだぞ。だからディーノ、お前やり方教えてやれ」
そんな、ちょっとこの問題わかんないから教えて、くらいの軽い言い方で言わないでくれー!!
と叫んでいた綱吉の心中は露知らず。もっと驚くべきな事は。
「ん?オレが?…別に良いけど?」
とあっさりディーノが頷いた事だった。
あぁぁぁぁ…、同じ境遇で同感できると思って居たオレが間違いだった…。
所詮、ディーノさんもリボーンと同じ穴のムジナと言う事なんですね。
なんて頭を抱えていると、あろう事かディーノが覆い被さるように両手を顔の横に置いてくる。
なまじ綺麗な容姿をしている人だから、ついドキ…と鼓動が跳ねてしまった。
「ツナはどっち?入れたい方?逆?」
「そりゃ…どっちかってーと入れた…ってそうじゃなくて!…オレ、そんなつもりは…!!」
きょどっている様子に、くす…と小さく微笑みかけられて。それがやけに艶を含んでいる感じがして。
高まる動悸が押さえられない。たぶん今、自分の顔は真っ赤なのだろう。
「いいじゃねーか別に、相手への触り方教えてやるって。それとも、オレじゃ役不足かな」
「そんな!とんでもない!!!」
微苦笑して言うディーノの言葉に、咄嗟に綱吉が叫んでしまう。
それを聞いてにや…と笑うと。ディーノは横に寝転んで、綱吉の身体を引っ張った。
すなわち、自分の身体の上へと。
「うわ!…ディ…ディーノさん…!!!まずいですって!」
未だ悪あがきをしてじたじたしている綱吉を見上げ、
ディーノは微笑んで頭を引き寄せて騒いでいる顔を至近距離で止めた。
息がかかるほど近づいた視線に、思わず口を噤む。
「相手とはキスしたか?」
「…えっ…、あ…それは。しました…」
「じゃいっか。オレとした事は勉強だと思って絶対内緒にしとけよ?」
悪戯っぽく目を細めて笑うディーノの表情に見惚れているうちにその瞳が近づいて来て…
考える前に唇が重なった。
「んんんんん!」
「こら、唇噛みしめてんなって、ツナから舌入れろよ」
驚きにがっちり口を噤んでいた綱吉にディーノは呆れたように言い。
ペロ…と閉じた唇を舐めた。
それに促されたように綱吉が舌を差し入れてきて。
ディーノはほくそ笑むと、自らの口内で絡めだす。
動きを伝えるかのように順に這わせたり吸ったりしていると。
それを追うように綱吉が深く唇を合わせて来た。
「ん、まぁ……キスはこんなもんで良いかな。覚えとけよ」
「は…、はいー…」
こんなディープなキスを経験した事のない綱吉はすっかり顔が茹で上がり。
ぼー…っとしながら頷いた。すっかりもう、授業の姿勢になっている事を疑問に思っていない。
こんな蕩けるような経験を、彼とできるなら教えて貰った方が良いなぁ…なんて。
すっかり乗せられている綱吉であった。
「さすがオレの生徒だな、飲み込みが早いぞ」
「…って、リボーン!!!居たのかよ!!」
すぐ近くで声がして、びくー!!とそちらに顔を向け綱吉が叫んだ。
さも当然…と言う感じでベッドの枕もとのすみっこにちょこん…と居るリボーンに。
今のキスとか見られていたかと思うと、恥ずかしくって仕方ない。
しかしディーノは全然気にしていない様子で、さっさと自分の服を脱ぎ始めたりしていて。
「……あ、あの。ディーノさん…本気ですか…」
「あ、服はお前が脱がせてやれよ?あまーい雰囲気でな、今は手っ取り早くやり方教えっけど、雰囲気は大事だから」
さばさばと言って上体を晒し、綱吉の下に寝転がるディーノに再び眩暈を覚えた。
リボーンが居る事については何の拘りもないらしい。
一体どんな教育をされて来たって言うのか…。オレは絶対に同じ轍は踏まないぞ…!!!
固く心に決意するものの、引き寄せるディーノの腕を振り解けない時点ですでに手遅れである。
「…ま、前戯はさ、省くぜ。男も女もあんまり変わらないし、撫で回してキスして、前の触ってやれば良いんだから」
「そ…そんな事言ったって!それができなくって困ってたんですけど」
「さっきくらいのキスできれば、自然にそーゆう流れになるって!」
容易な事のように言うディーノに眉を顰めて言うと、けら…と笑ってまたも簡単に言ってのける。
(そ…、そうかなぁ…)と口端を揺らしている綱吉を尻目に、寝転がったままディーノはリボーンに視線を向けた。
「何かあるか?」
「あぁ…、ぬかりはないぞ」
明確な名称がなくとも頷いたリボーンに、綱吉はきょとん…と動向を見守る。
二人はわかってるみたいだけど何だろう…。
首を捻っていると、飛び跳ねてリボーンが向かった綱吉のタンスの一番下から、
小さな包みとチューブのような物を持ってきてディーノの頭の横に放る。
再びベッドの隅に移動してちょこん、と座った。
「お、用意が良いなぁ。さすがリボーン」
「何ですか?」
賞賛を述べてから包みを口で破っているディーノに綱吉が不思議そうに問い掛けると。
彼が言う前に出てきた物を見て正体が知れ、目を丸くする。
「ん?ゴムとゼリー」
「ななな、なんでそんなもんがオレのタンスから出てくんのー!!」
指先でつまんだコンドームを肯定付けるディーノの言葉に、綱吉は頭を抱えリボーンに叫ぶ。
リボーンはひょい、と片眉を上げ「備えあれば憂いなしって言うだろ?」と飄々と返した。
何の備えだよー!!と頭を押さえていた綱吉の手を取って。
ディーノは中指と人差し指にそれを被せた。
「は…、あ…あの。ディーノさん…?」
「直接はツナも嫌だろ?相手の子じゃないとさ。慣らし方教えてやっから。…男同士はどこ使うか知ってるか?」
「へ?…あ、まぁ。一応は…」
被せたゴムにチューブから透明な粘りのある液を塗りつけながら、ディーノは綱吉の答えに満足げに笑むと、自らの足の間にその指を持って行く。
手探りでの行為に思わず視線を下げそうになって、上から叱咤の声がかかった。
「見んなよ。…たぶんやる時は暗いぜ?感覚で覚えろって」
「は、はいっ」
家庭教師さながらの言いつけに、つい良い返事を返しつつ顔を戻して。
先にディーノの顔を認めて、かぁぁぁ…と頬が赤くなる。
うわー…てゆーか本当に良いんだろうか…これ…っ。
今さらながら怖気づく気持ちが浮かびつつ、取られた手がディーノの下肢の奥の方に持っていかれて。
その場所にゴム越しの指先が当たった。
「そこだ…、まず解さないといけないから、ゆっくり入れて」
「…は…、はい…」
逡巡しつつも促されるままに指先を潜り込ませると、上体を腕で半分起こしていたディーノの身体がベッドに沈む。
「ぅっ…、ん…」
「だ…っ大丈夫ですか!?」
「大丈夫…だから、そのまま第二関節…くらいまで進めて…」
眉を寄せるディーノに心配そうに呟くも、はぁ…と悩ましげな息を吐きながら指示する様子に。
綱吉はごくん…と喉を鳴らして、言われるまま指を進める。
前戯はなくともすべらかなゴムとゼリーは充分滑りが良く、抵抗もなく沈んでいく。
「んっ…、ぁ…、そ…。そうやってゆっくり回しながら入れて…」
「こ、…こうですか?」
「……ぁっ…ぅ…、そう、だ…。飲み込み良いな…」
教示されるまま指を動かしていくと、ディーノの鼻から高く吐息が漏れて身体が小刻みに震える。
僅かに頬を上気させ呻く声がなんともいやらしくて。
さっきから綱吉の鼓動は最高潮に弾んで仕方ない。
痛そうじゃない表情に、こういう潤滑剤的なものはやっぱ効果あるんだなぁ…。
と心に覚えつつ、次の「上の方をちょっと擦ってみて」と言う示唆に従って、く…と指を曲げてみると。
ディーノの身体がびくん…と揺らいで、綱吉は驚いたように目を見開く。
「…あ、中に…あるんです、ね?」
「あ…っぁ、…そう…ちゃんとある…から。相手の子の…探ってやって、大体…そのへ…っん」
「そうなんだ…、男でもあるんだ…」
くいくい…とそこを何度か刺激すると、ディーノの声が上擦って顔が切なげに歪む。
確かに気持ち良さそうな反応があり、綱吉は痛いばかりだと思っていた受け入れる側にも。
ちゃんと感じれるとこがあるんだと知って、ほっとしていた。
気持ち良くしてあげれるんだと思えば、臆病で触れれなかった自分の背を押す事ができるような気がする。
「は……、わか…ったか?…ツナ…」
「あっ、はい!わかりました…。有難うございます。何か…進めそうな気がします…!!」
「……そっか…。これくらい…やれば、多分…辛さも減るだろう…っし。…んっ…ツナ。もう指…止めっ…てくれって」
「っ!あ…す、すみません…っ!!」
言いながらも喘ぎの声を漏らすディーノに、慌ててずるり…と指を抜くと。
引き攣った声が下から漏れた。はぁはぁ…と、息を整える呼吸が聞こえる。
「最後まで…するつもりはないしな。だって…初めてはその子が良いだろ?」
「あ…、だから。…っディーノさん、有難うございますぅぅ…」
自分の事を考慮して言ってくれた兄弟子の心遣いに感動して、綱吉はぎゅー…とディーノの肩口に頭を寄せて感謝を述べる。
それに、くす…とディーノは笑うと、ぽんぽん…と綱吉の背を叩いて「頑張れよ」と返した。
「何だ、別にバレやしねーんだから、ヤっちまえば良ーのに」
感動的な感じで心が満たされていたというのに、それをぶち壊す声が隣から聞こえて。
忘れていたが、始終ずっと見ていたであろうリボーンに、がっくりと肩を落とす。
「ははは。ツナはそんな器用じゃねーんだから、このくらいで勘弁しとこーぜ?」
「まーな。嘘は付けないだろうし、相手以外とヤったら後々引き摺るだろうしな」
何と言うか、第三者が居る状況でこんな事までやってしまっている自分にも溜息をつきつつ。
けろり…としている元師弟コンビにも頭痛を覚えた綱吉だった。
Next→HD
back
2008.07.6
ツナDとして達成できてない気がします;;すみません。
しかし本命いるのに突っ込むツナもどうかと思い。一応押せ押せディーノなんですが
その代わりNextのHDが乙女になっちゃいました(爆)