「きょう…やっ、…ぁっ…もう、止めろ、ってば…っ」
ぞくぞくする、掠れた声。
身体が揺さぶられるような昂揚に、手段が違っていなかった事を悟る。
両手を縛った鞭が、長く伸びて先がソファの足に繋がっていた。
幾度も拘束を外そうとして身じろぐも、一人で居る彼は思うように動けないようだ。
もちろん、それを知った上で仕掛けたのだが。
楽しげに触れる手は胸から脇腹、腹筋を辿って行く。
すでにズボンを降ろされて露わにされていた下肢は、反応を示した自身が曝け出されていた。
制止をかけつつも快感を覚えているのは明白で。
恭弥は躊躇なく立ち上がったソレを扱く。
「ぅっぁぁ…、ぅ…ん…っぁ…ふ」
びくんと首を仰け反らせ、甘いとさえ思える声が響いた。
身体の中心が熱くなる。この興奮は、戦いの中で血を見た時に類似する気がしていた。
乾いた唇をぺろりと舌舐めずりして濡らし、単調に手を上下させて愛撫する。
そんな拙い手つきにも面白いくらいに手の中のモノは反応して。
先端から蜜を溢れだしていた。
「あなた、僕が好きだって言ったよね。なら嫌じゃないだろ?」
相手が紡ぐ日常会話の中で唯一心に止めた記憶を言い、脈打つソレを弄る。
持ち出した言葉には閉じた目を開いて、ディーノは潤んだ瞳で見上げてきた。
その間も悪戯に手は動き続けていて。腰は小刻みに震えている。
「言った…けど、でも…っ」
「でも、何?こんなに感じて、緩い抵抗しかしない癖に。どんな言い訳があるの?」
「ぁっ、ァ…ッ、…んん、ぅぁ…」
ぐり、と先端の割れ目を指先で潰せば、刺激が強過ぎるのか溜まっていた涙が零れた。
ただ手で擦っているだけなのにディーノの体内には感じた事のないような快感が溢れている。
気持ちが伴っている所為だと自覚はしているものの、流されるにはまだ足りなくて。
頭に残る感情が引き止めていた。
「だって、お前は…、何も返事をくれない…じゃないか」
必死で快感を抑えた声で下から紡がれる声に、恭弥はぴたりと手を止める。
動きもないまま握られたソレは、浅ましくもびくびくと震えていた。
そのまま何も言わずにじぃ…っと眺めていれば。
たまらなくなったのか、ディーノは視線を逸らして密かに息を吐いた。
顔が背けられた瞬間に、唐突に手の動きを再開する。
「ッあ…っふぁ…っん、ぁっァ…!」
「――僕にはその感情が、理解できないんだ」
恭弥は低く言いながら愛撫を続けたまま、片手をディーノの顔の横に置き覆いかぶさった。
快感に喘ぐ上気した顔を見つめると、身体に痺れが走り中心が疼き出す。
「でも、こうしたいって欲求だけがある。僕はやりたいと思ったら実行する」
「んっ、ぁ…、ふ…そんな…、勝手、な…」
「…止めようとしないのに、僕だけを責めるのはおかしいよね」
「…こんなっ、風にされて止めれるわけ…!!ぁっぁ…っふ」
ぎゅ、と熱くそそり立つモノに握力をかけると、言葉が遮られ嬌声が響いた。
恭弥は、「嘘つき」と一言だけ返して、顔を近づけて唇を合わせた。
柔らかく重なる唇に、ディーノは目を見開く。
ねっとりとヌメるものが唇の合わせを辿り、中に侵入してきて。
ざらりとした舌先同士がこすれ合い、ぞくりと痺れる感覚に脳が蕩けそうになる。
深く絡め合う吐息が熱く、まるで睦み合うようなキス。
互いの息が上がった頃にそれは離れて行った。
「きょ…ぅ、や…、…」
「…理由なんて知らないよ。触りたい、…衝動だけで何が悪いの」
「っ…ぁ、きょう…っ、ぁっァ…ッ」
欲情した掠れた声で囁けば興奮のまま、恭弥は性急な手つきで自分のモノを取り出すと。
張り詰めた二つの塊を一緒に握り込んで擦りだした。
ごりごりと硬い感触が響き合い、触る熱さに快感が突き抜けて行く。
中心から響く快楽以上に、双方から漏れる掠れた吐息が、熱を煽っていた。
「んっぁ…ぁ、ぁっ…恭弥…っ…、もう…」
「っ…ん…、…」
両手で包みこみ掌の中で互いに腰を揺さぶり擦れ合わせて、限界の声を発した時。
ほぼ同時に、熱く熟れたモノが弾け先端から白濁が溢れだしていた。
「……、――――」
はぁはぁと荒い呼吸の中、恭弥は吐息だけで音にならない何かを呟いた。
鼓膜を震わす事のない言葉だったが、ぼやける視界で捕らえたディーノには届いていて。
理解した時、全身の力を抜いて柔らかく微笑んでいた。
「は…、何だ…。理由…あるんじゃねーか…」
「…何の事?」
「理解したくないならいーよ。ぐだぐだ考えるより、衝動で動く方がお前らしい」
「だから…」
「好きだぜ、恭弥。…だから、もっと…触ってくれよ…」
口を挟む間もなく矢継ぎ早に言うディーノに、眉を潜めるも。
最後の甘くかすれた声に、言葉を飲み込んだ。
甘く誘う声に、それこそ突き動かされて。
考えるより先にディーノの身体に沈んでいった。
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